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19-3 スキルがあっても無理なものは無理!

 婆さんは俺の口に甘い飲み物を飲ませ、背中から腰からを強く摩る。楽になるけれど止まらない。ダダ漏れじゃん、水!  そんな痛みに耐える事一時間。  俺はこの一時間の間に何回「まだ?!」と聞いたか分からない。婆さんがずっと手をかざして、道が開くのを見ていてくれた。けれどこれが痛みのせいで進んでく感じがしない。何度も聞けば「まだ五分もたっておりません!」と怒られた。  それでも一時間が経過して、空が茜に染まり始めるくらいに俺は場所を移された。  小さなベッドには綺麗な布が敷いてあるけれど、妙に握り勝手の良さそうなポールがある。俺はその上に寝かされて、足を恥ずかしくおっ広げにしたまま固定された。 「さぁ、お待たせしました。口が開きましたので好きなだけ踏ん張っていいですぞ!」  って言われてもどうやって! 「ひっ! ふぅぅ!」  ずずずずずっと、重苦しい痛みが全体に走って自然と体が収縮するように力が入る。少し遠くで婆さんが「息を吐ききる感じで!」と言うからその通りにした。  腹の中でズルズルと、下に下がっていくのが分かる。なるほど、このポールは必要だ。俺はそれに掴まって、ひたすら頑張っている。 「いいですか? 痛みが強くなった時に息を吐ききるようにゆっくりじっくり力をかけるのですぞ。痛みのないときはしっかりと休んで力を蓄えるのです」 「そんな……上手く……いかない……てばぁぁ!」  何かが降りてくるのを感じてはいるが、その道のりやたらと遠くないか? これ、ちゃんと出てくるのか? 俺その前に力尽きないか?  それでもはふはふいいながら数十分もかけて頑張っていると、すぐそこまで降りて来た。  でも、そこが通らない。俺が頑張っても出てこない。なんて言えばいい? もの凄く腹が痛くてたまらないのに、入り口に野球の軟球よりも少し大きい感じのものがあって出ていかない感じ? 「ごめんなさい! もう無理! 無理だって!」 「無理と出てからが勝負ですぞ!」 「なにそれぇぇぇぇぇ!」  どういう心理だよそれ! 俺を殺すつもりかよ!  冷や汗出る。命がけってこういうことかよ。死ぬよ本当に。痛いよ、辛いよ、苦しいよぉぉ! 「ほれ、頭がもう少しで出てきますぞ!」  言われて、涙目になりながら色んな事が浮かぶ。  「楽しみだ」って言ってくれたロシュや、王様やお妃様の顔。  俺の事をずっと不安そうに見ていて、部屋を移されるまで付き添ってくれていたユーリスの顔。  顔、見せてやりたいよな。俺頑張んないと、ユーリスに見せてやれないよな。  ってか、諦めたら俺もこの子もどうなんの? 帝王切開なんてないでしょ? 俺の根性なしが、最悪この子殺すの? 「ふっ…うぅぅぅぅ」  もうどうにでもなれ! 切れようが裂けようが知るか! ここ一つ頑張れないで、これまでの恩をどう返すってんだ! 俺だって家族欲しいよ! 親子で休日とかすっごく憧れだよ! ユーリスと結婚して、子供いて、初めての言葉が「パパ」か「ママ」かでやんや言いたいよ!  ブチッと音がした気がした。もの凄く痛かったけれど、更にそこを裂くように力を込めて息を吐ききっていくと、落ちていく。  やがてズルンと抜け出ると、さっきまでの痛みが何だったのかってくらい楽になった。 「ふっ、にゃぁぁぁ!」  ちょっと遠い所でか細くて、でも力強い声が聞こえる。俺は朦朧としながらそれを聞いた。楽になって、抜けた声で「へへっ」と笑った。 「頑張りましたな、マコト様」  優しく婆さんが言って、俺の腹に手を当ててくれる。すんごく温かくて気持ちがいい。 「やはり人の体で竜人の子は辛かったですな。酷く傷ついて」  下を見たら、なんか血の海だ。一気に貧血になってベッドに寝転ぶ。けれど、すんごい満足感。俺は自然と笑っていた。

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