6 / 8

第6話

「なー。 なんでおまえ、木野なんかと親しくしてやってんの?」 友達の言葉が不快だった。 ……“木野なんか”。 颯人はそんなふうに云われる人間じゃない。 「知ってんだろ? あいつ、男を売って教授に取り入ってるって。 女相手だけでもあれなのに、男だって相手するんだってさ」 「噂だろ、ただの」 噂、噂、噂。 颯人を取り巻く、嫌な噂。 知らないわけがない。 でも、俺の知る颯人はあどけなく笑う、どこか頼りない男なのだ。 到底、そんなことをしているなんて信じられない。 「なに? もしかしておまえも、相手してもらってるとか?」 「そんなことある訳ないだろ。 俺にかまってくるから、めんどくさいけど相手にしてやってるだけ」 嘘、だった。 颯人が放っておけなくて。 俺の前で笑う颯人の顔が大好きで。 けれど、自分も友達に、そういう風に見られるのが怖かった。 だから、口をついて出た嘘。 その証拠に、声が微妙に震えてた。 「おまえ、優しいもんな。 だから、つけあがられるんだよ。 迷惑だってはっきり云ってやればいいのに」 「……そう、だな」 ついた嘘が胸にずきずき突き刺さる。 颯人に聞かれてないのが唯一の救いだと思ってた。 ……でも。 颯人は聞いていたんだ。

ともだちにシェアしよう!