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第7話
「だいたいっ」
動きを止めた颯人から、絞り出される声。
「どうして君が、こんな僕なんかと……」
気付けば、顔の上にぽたぽたと水滴が落ちてきてた。
「聞いてるんだろ、僕の噂。
あれはほぼ真実だ。
教授に拾われるまで、僕は男相手に身体を売って……」
ぽろぽろと落ち続ける涙を拭ってやりたいのに、手は拘束されたまま。
どうしようもない俺は、そっとその唇に自分の唇を重ねた。
「かな、た……?」
「別におまえのこと、軽蔑したりしないよ。
……その身体。
生きるのに必死だったんだろ?」
颯人の身体につく、無数の傷。
楽なことじゃなかったことだけは確か。
でも、そうまでしないと颯人は生きてこれなかったんだ。
気持ちを伝えるように、唯一自由になる唇を、何度も何度も颯人の唇に重ねる。
「迷惑だなんて思ってない。
嘘なんてつくもんじゃないな。
結局、自分に返ってくる」
「かな、……たっ」
「はずせよ、これ」
かしゃんと手錠を揺らすと、側に置いてあった鍵を手に、颯人の腕が背中にまわる。
がしゃん、重い音と共に自由になる、腕。
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