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彰広

彰広は組の表向きの会社が経営している高級クラブに久しぶりに足を運んだ。 彰広は特定の愛人は持たないが、気に入っている女はいる。 セックスが上手く、余計な事は聞かず邪魔にならない女だ。 このクラブのNO.1ホステスがそうで、 彰広は何度か関係を持っていた。 確かに美しい女で聞き分けもいい。 それでも本当に彰広を満足させることなどできないのだ。 ただ溜まった情欲を吐き出すだけ。 誰が相手でも、満たされることは無いのだから。 ───透以外は。 あの密室での三日間、拘束し自由を奪い、徹底的に透を凌辱して思うさま貪った。 透の体は若木のようにしなり、その体の奥深くまで彰広の雄を咥えこみ離さなかった。 自身の暗く濁った想いを成就する為に、あの三日間で透のすべてを奪った。 それで満たされる……そう思っていた。 透に彰広を刻み込み、忘れられなくして……。 そうすることで彰広の業の深い欲は満たされると思っていた。 事実は逆だった。 透の体に触れ、切なげな声や熱い内側を知ってしまえば、ことあるごとに思い出してしまう。 飢えている、と彰広は感じた。 これまでも七年間も会っていなかったのだが。 透を抱いた今となっては、一人の夜には透が欲しくてたまらなくなった。 彰広は自虐的に笑った。 ───ミイラ取りがミイラになったな…… 透を思い出し、どうしようもない程に飢餓感が増す夜は女を抱くことにしている。 目的の場所に着き、静かに車が止まった。彰広は車を降りた。 ふと視線を感じて、向かいに目をやると ───透!?   まさかこんなところで会うとは思ってもみなかった。 なんて表情をしているんだ……。 あの三日間から半年ぶりに会う透は十代の頃の透明感はそのままに、そこはかとない暗い色気が内から漂っている。 清潔感のある整った顔にひとはけ、婀娜っぽさを乗せた透の表情にゾクリとした悪寒が走る。 ある種の男の情欲を煽る顔になった。 透に男を教え、変えてしまったのは自分自身なのに、そんな空気を醸し出している透に苛立ちを覚えた。 すぐさま視線を反らせたが、誘蛾灯に誘われる哀れな蛾のように、再び透に視線を向ける。 透は連れの男に肩を抱かれて、その場を立ち去るところだった。 それを見た彰広は腹の奥がカッと熱くなるのを感じた。 今すぐに透の髪を鷲掴みにして引き倒し、その男はお前の何だ!? と問い詰めたい。 彰広は秀麗な眉を寄せ、透の後ろ姿を睨むように見つめた。 「鷹司さん?」 ホステスに声をかけられ、我に返る。 透にはもう会わないと決めたのは自分自身なのだ。何を血迷っている。 小さく舌打ちをして、未練を断ち切るように彰広は透に背を向けた。

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