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嫉妬2

彰広は驚きを隠せないでいた。 透は今「あの女のところには行くな」と、そう言ったのか? この部屋に透を連れ帰ってから気まずい空気が流れていた。 「男をとっかえひっかえ」などと、思ってもいないことを口走った。 透を責めて傷つけたいわけじゃないのに。 透に触れたさっきの男は殺しても殺したりないくらいだが、不用意に触れさせた透にも腹が立つ。 ……別に、透は俺のものってわけじゃないのに。 立ち尽くす透を見て、苛立ちの他に少しばかりの罪悪感を感じた。 酒でも飲んで空気を変えようと、タバコを灰皿に押し付け、彰広は立ち上がった。 「!?」 酒とグラスを取りに横切ろうとして透に腕を掴まれた。 行くなと引き止められて、彰広は戸惑う。 何のことかと思ったが、さっきのクラブのホステスの処へ戻るとでも思ったらしい。 この部屋に入って初めてまっすぐ透の目を見た。 彰広は密かに息を飲む。 透の澄んだまっすぐな瞳の奥に、ドロドロとした熱が見える。 ───嫉妬している? 透が? 初めてだった。透の方から自分に対して執着を見せるのは。 そう感じた瞬間、狂おしい程の熱が彰広の体を突き抜けた。 あの日、彰広が透に植え付けた種は、透の中でじゅくじゅくと熟れて、腐りかけの果実のように甘い匂いを放っている。 透の瞳の奥に、ドロドロとした感情を見て、彰広は欲望に駆られた。 ───もっと見ていたい。 「だったらどうだって言うんだ。エリカはいい女だったろ?」 意地悪く笑みを浮かべて言い、傷ついたような表情の透を味わう。 透の顎を掴み、強く視線を交わらせる。 「俺にいて欲しいか?」 「……」 「言えよ。透」 「……行くなよ、彰広。ここにいてくれ」 まっすぐに目をそらさず、彰広を見つめて透が答えた。 ゾクゾクとした快感が彰広の体を満たしてゆく。 「じゃあ、代わりにお前が楽しませてくれるんだな? さっきも他の男とお楽しみのようだったしな。男を知って、随分と色事に盛んになったみたいじゃねぇか」 「あいつとは何も無い!! 俺は……俺はお前しか、知らないんだから」 お前だけだと、透の口からそう告げられ、彰広の心が歓喜の叫びをあげる。 それを悟られないように、わざと冷ややかな微笑を浮かべ、 「へぇ……なら確かめさせろよ」 透の顎を捉えたまま、彰広はゆっくりと寝室へと導いた。 

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