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接吻2

ふっと透は目覚めた。 見知らぬ天井。 隣には透を腕に抱くようにして彰広が眠っていた。 透は彰広の寝顔を見つめた。 普段は軽く後ろに流し、整えられている髪が崩れて、額にかかる前髪が10代の頃の彰広を思い出させた。 透は昨夜、自らの手で彰広の髪を乱し、激しく口づけたことを思い出して一人赤面する。 彰広との深い口付けは初めてだった。 彰広と透がキスをしたのは二回だけだ。 ママゴトのような幼いキスだけ。 あの監禁された三日間も、あれだけ透を抱いておきながら、一度たりとも深い口付けはしなかった。 映画でだったか、本で読んだのだったかは忘れたが「セックスはしても、キスだけは好きな人としかしない」という娼婦のセリフを透は思い出した。 彰広はこんなにも深く透の中に押し入ってきているというのに……唇にだけは触れない。 悔しさと切なさが相まって、彰広を抱き寄せ唇を奪った。 彰広は一瞬動きを止めたが、激しくキスを返してくれた。 いつまでもお互いを貪りあうような、激しい接吻だった。 彰広に求められて嬉しい。セックスよりもずっとキスを続けていたい。 もっと求めて欲しい……彰広を離したくない。そう願ってしまった。 こんなにも誰かに執着したことは無かったので、透は初めての感情を持て余していた。 彰広が目覚めたとき、どうしていいか分からない。 整った男らしい、艶のある彰広の寝顔を見つめる。 ……まだ起きるなよ。 透はそっと、彰広の唇に触れるだけの口付けをした。そのぬくもりに胸が切なくなる。 そうして彰広の腕の中で、透は再び目を閉じた。

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