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夏期休暇8
冷房の効いた1DKの室内。
透はぐったりとベッドに横たわっていた。
デニムだけを履いた彰広はタバコを咥えたまま、冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。
美しく逞しい彰広の筋肉質な背中を見つめながら透がぼやく。
「……この部屋、禁煙」
「うるさい」
彰広は冷えたボトルを一本、透に投げて寄越した。
透はけだるげに半身を起こし、ボトルに口をつけた。
水を嚥下する喉を見て、彰広は少しだけ欲情する。
まるで盛りのついたガキみたいだと思い、彰広は透から視線を外した。
「……今日はどうしたんだよ?」
水を飲み、一息ついた透が聞いてきた。
「なんか……変だ。もしかして、また離れようとか思ってるのか?」
「んなわけあるか。お前が嫌だと言っても手放す気なんてねえよ」
彰広の言葉に透が目元を朱に染める。
「じゃあ……なんなんだよ」
透が答えを知りたがる子供のように、じっと彰広を見つめた。
「お前の日常を見てみたかったんだ」
実際、彰広は透と離れる気など更々ない。
仕事を辞めさせ、透を囲ってしまいたい欲求もあるが……。
透から執着の片鱗を見せられて、求められ、満たされた今となっては、以前のように監禁しようだとか、女のように囲うことなどもう彰広には出来ないのだ。
「教師を辞めさせたい気持ちもある。あの変態教師のこともあるしな」
「あれは、もう解決したから」
あんな男一人くらいどうとでもできるから任せろと、彰広は言ったが、透はそれを止めた。
透は彰広がヤクザ稼業なのは認めているが、自分のためには手を汚してほしくないのだと言う。
あの後、黒田は階段から落ちたのだと他の教師達に話しており、女性教師などは、黒田の綺麗な顔が傷ついたことを嘆いていた。
透は黒田に「もう自分には構うな、あの日のことは忘れるから黒田にも忘れるように」と、伝えた。
それ以来、黒田が透に必要以上に接することは無くなっていた。
「中山先生は好かれてるなぁ。お前は良い先生で、その相手が男でヤクザってリスクが高いよな」
「彰広……」
透は不安げな瞳で彰広を見上げた。
彰広はタバコをシンクで消して、透の横に座る。
「それでも俺はお前と離れる気なんかねぇからな。覚悟しとけよ」
「……!」
「ちゃんと考えてる。お前が先生続けて、それでも一緒に入れるように。透にとってどうすんのが一番いいのか」
透は信じられないものを見るように彰広を見た。
「なんだよ、その目は。最悪、かっさらって監禁しちまうからな」
突然、透の手が彰広の頭を掴み、無言のまま引き寄せてキスをした。
唇を合わせて舌を絡ませ、彰広は透の求めるままにキスを返した。
透はキスが好きだ。
深く口づけながら、彰広の頭を抱き、髪を乱す。
彰広は透に髪を乱されるのが好きだった。
深く、深く舌を絡めあい、透の体をベッドへと横たえる。
そのまま二人は三回目のセックスへとなだれ込んだのだった。
end
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