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成人式1
───七年前。
透は高校卒業後、大学に進学し、実家を出て一人暮らしをしていた。
忙しく充実した日々に、自然と連絡を取り合うことが少なくなり、透が彰広と二人で会うこともめっきり減った。
今日は成人式だった。
彰広は地元に帰ってきた透と久しぶりに会う約束をしていた。
「お前、やっぱり成人式来なかったな」
「めんどくせぇ。あんなもん」
彰広も高校卒業後、家を出て一人暮らしをしていた。
成人式の後、同級生達と飲んでから、透は彰広の部屋に来ていた。
「ほら、飲めよ。 透」
彰広は透にビールを勧める。
「俺、けっこう飲んで来ちゃったし……」
「大人になった祝いだ。……まさか、お前まだ童貞……」
「違うって! おかげさまで彼女もできましたー」
彰広の胸がチクリと痛む。
透は大学で彼女ができたらしい。
「よかったな」と、笑って言いながら、彰広は沈んでいく気持ちを止められなかった。
───遠くなったな……。
高校の頃から、彰広は問題児の不良で、透は真面目な生徒で……お互いのフィールドは違っていた。
それでも、しょっちゅう連んでいて、一番近くにいるのが当たり前だった。
でも、今は……
───遠く、離れていく。
この時、彰広はすでに裏社会に足を突っ込んでいた。
地元の連中から噂は聞いているかもしれないが、透は何も言わなかった。
彰広も話す気はなかった。
昔のまま、いつも通り、じゃれ合うように軽口を叩いて過ごす。
だが、彰広の透を見る目は無邪気な子供時代とは異なっていた。
今では自分の透に対する感情を、彰広は自覚し、理解していた。
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