76 / 321

第76話

亜咲斗side 今日もいつもの仕事がはじまる。 男に色を売る仕事… もう慣れてしまった。 俺相手に大枚をはたくような人もいた。 それが毎日の光景。 どうせここで朽ちていくのならお金なんていらない。 でも誰かに愛されてみたい…俺のことを一番に思い考えてくれる人に出会いたい。 でも…そんな人はまだ現れない。 所詮俺は商品で客には客の生活がある。俺だけを思う人なんて現れるわけない。 でも…望んでしまうんだ… そんな毎日を過ごしもうどのくらいたったのだろう… 会いたくてたまらなかった人が現れた 「亜咲…」 「あれ?琉輝さん。今さら何?落ちた僕を笑いに来たの?」 会いたかった…とてもとても会いたかった…でも素直に喜べなかったのは琉輝さんが前みたいな狂気をはらんでなかったから… 「謝りに来た」 「…は?」 そんなの…俺の好きだった琉輝さんじゃない…嫌だ… 「すまなかった」 嫌だ…嫌だ…こんな弱々しい琉輝さんなんて… 「じゃあ俺のものになってくれる?琉輝さん。約束だったでしょ?」 あなたなら獣みたいに俺を求めてくれるよね? 「それは…出来ない…大切な…唯一の人が出来てしまった…ごめん」 どうして…何で…前は与えてくれたじゃない。 何なの?大切な唯一の人なんて!貴方はそんな人作ってはいけない!! 「何それ…何なの…!酷い!!酷いよ!!」 「ごめん…」 嘘だといってよ…琉輝さん!! 「…わかった…許すよ。俺を抱いてくれたらね」 「それは…」 どうして躊躇うの?これまで散々酷いことしてきたのに…これまで多くの人抱いてきたのに…人間とは思えないような人だったのに… 「出来ない?」 「ごめん」 許さない!!許せるわけがない!! 「やだ。許さない…」 「無理だ…」 「嫌だ!」 「ふぅ…わかった…抱いたら…いいんだな」 「いいよ。来てよ。前みたいに愛してよ」 ねぇ。前のあなたに戻って?俺が愛した貴方に… 「わかった」 足りない…足りない…まだ人の目をしてる…そんなのダメ… いくつもいくつも琉輝さんに花を咲かせていく 何で…何で?何で戻らない? お風呂まで入れてくれるなんて…そんなことしたことないのに…何で…可笑しい…可笑しい… 「琉輝さん…」 「何だ」 「その唯一の相手って…僕も知ってる人?」 誰?貴方をこんな風に変えた人は…その人を俺は許さない… 「…」 「いいでしょ?最後に教えてくれたって」 「知ってるはずだよ」 まさか…まさか… 「みっちー?」 「うん」 何でみっちーなの…何で智輝の心も手に入れていたのに琉輝さんまで… 「そっか…みっちーいい子だもんね…智輝はどうしてる?」 「…」 「ねぇ!教えて?」 「…俺もわからない…ただ…智輝にはいつも由斗くんがついてくれている」 「そっか…そっ…か…」 何で…由は…智輝を見捨てたはずなのに… 「じゃあそろそろ行くから」 背を向け歩き出す琉輝さんの姿… 何かが俺の中で音を立てた。 いつも護身用に各部屋の枕の下に用意してあるナイフを取り出す 重たい体を起こし琉輝さんを追う ドスッ… 「っ…亜咲…お前…」 「何で…何でみんな幸せそうなの?何で俺だけこんな目に合わないとならないの?可笑しい…可笑しいよ!!」 何度もナイフを振り下ろす 血に染まる琉輝さんは俺の好きな琉輝さんに似てた このまま琉輝さんの体液でこの部屋を満たしたい… 動かなくなった琉輝さんを見つめる 「大好きだよ」 その後朱に染まった服を着替え部屋から出た。 「310。オーナーは?」 「寝ちゃった…今日オーナーは一人できたの?」 「お連れ様がいます。」 「そう」 「310何処へ?」 「お散歩」 きっと連れはみっちーだ。多分あの部屋にいる…ナイフを隠したままあの部屋に向かった

ともだちにシェアしよう!