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更紗の場合/11

考えている暇はない。 急いでそこへ向かう。 早く…早く…美芳を助けないと… 力も何もない俺に出来ることがあるのかわからないけれどとにかく急いだ 久しぶりに見上げるかつての棲家。 俺はピアノ等を引いていたので部屋は防音になっていて外には音は漏れることはない 自分の家だったんだ。インターフォンなんて初めて押す。 押すとドアが開く。 俺を誘うようにゆったりと…開ききる前に体をねじ込みエレベーターのボタンを押した 「君が更紗ちゃん?聞いてた通り…美人だね」 「美芳はどこ」 「そんな慌てなくてもちゃんと会わせてあげるよ」 男について奥の扉を開ける。 一番しっかり防音の効いた部屋だ。俺のピアノをおいていた場所。 「お待たせ。美芳。土方さま」 ドアを開けるとむせ返るような雄の臭いと香の香りが充満していて中央に置かれた大きなベッドには泣きながら喘ぐ美芳。 明らかに普通の状態ではない。この香はおそらく媚薬だ。 以前金持ちの男と関係を持っていたときいつも焚かれていたもの… すぐに体は熱を持ちその場に踞る 男たちはおそらく解毒剤を元から服用しているのかこの香は効いていないようだ こちらに気付いた美芳は虚ろだった目に光を灯す 「更紗…何で…」 声は枯れてしまって顔はぐちゃぐちゃだ… 「いらっしゃい。更紗ちゃん。相変わらず可愛いね」 こいつ…知ってる…美芳の家に監禁され始める少し前頻繁に会い俺を酷く抱いていたやつ…この香をいつも使ってた… 二度と会いたくなかった人… 「光則さん…」 「ふふっ…覚えてくれてたんだね…嬉しいよ。君がいなくなってとても寂しかったよ…」 体が震える…怖い…

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