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更紗の場合/17
「みよしーーーーーーっ!!」
やだ…やだっ…やだ!!何で…どうして…
俺なんかと出会わなければ…こんなことにならなかったのに…
目を固く閉じ今目の前に広がっているであろう光景を見ないようにする。
見られるわけがない…愛しい人の赤く染まる姿なんて…
涙が止まらない…
「み…よ…し…お…ま…え…」
光則さんの初めて聞く声にそろりと目を開ける
「あんたには殺されてやらねぇ…」
見たことがないほど怖い顔をした美芳が光則さんの体を貫いていた…不適な笑みを湛えたままで…
赤く広がった絨毯はは美芳から出たものではなく光則さんのものだった…
「お前にこれ以上更紗は傷付けさせねぇ…死ね…土方…」
光を無くした瞳のまま光則さんに馬乗りになり何度も何度もナイフを振り下ろしていた
「ははっ…ふふっ…いい様だなぁ…土方…みんなは解放してもらうからな…おい…お前ら…更紗を解放しろ…」
「は…はいっ…」
あまりの形相に男たちは美芳の言いなりだ…
解放された俺は返り血に染まる美芳に抱きしめられていた
「ごめんね…更紗…怖いね…最後だから…だから…少しだけ我慢して…」
俺を抱きしめる美芳は光を取り戻し俺のよく知る優しい笑みを浮かべていた。
怖くない…美芳は怖くない…狂気の表情でさえ美しかった…俺は見惚れていたんだ…美芳の姿に…
俺は自ら唇を重ねていた…
「美芳…愛してる…」
光則さんと俺の血が混ざり赤く染まっていく俺たちを男たちは呆然と見つめていた…
誰も光則さんの手当てをするものはいない…絶命したことが分かっているからなのか…それとも逃れられた安堵からか…そんなの俺たちにはわからない…
「美芳…抱いて?」
「いいの?俺人殺しになっちゃったんだよ?」
「美芳ともっと触れあいたいの…だめかな?」
「わかった…」
久しぶりの美芳の温もりは怖いくらいに気持ちがよくてこのまま1つになって溶けてしまいたい…
俺たちの愛し合う姿を苦悶の表情で絶命している光則さんの瞳だけが写し出していた
「美芳…大好き…」
「更紗…愛してるよ…」
あぁ…こんなにも幸せ…
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