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更紗の場合/20
それから数ヶ月入院して今日は退院の日。
俺が入院している間両親や祖父母はマメに面会に来てくれた。
俺は父の会社の社員たちにいろんな意味で可愛がられてきていた。
琉輝さんに捨てられ智輝を利用しつつ社員たちとも関係を持っていた。
それが知られたとき俺と性的関係を持った社員たちを父は解雇した。俺が無理矢理されたと思ってしまっていて俺を助けるためだった。
しかし実際は俺から誘い関係を持っていた。だから急に切られた社員たちが暴動を起こしそれがきっかけで会社は倒産した。
多くの借金を抱えた両親は身を粉にして働いた。
そんな苦労も俺は見て見ぬふりをして…男を不特定で作っていた。
誰かに求められていないと自分の弱さに負けてしまいそうだった。
智輝が放っておけなかったんじゃない…本当は俺が誰かに欲してもらいたかったんだ…それを智輝のためだと勝手に言い聞かせていたんだ…
そんな俺なのに両親は俺を見捨てることはなかった
美芳に監禁されていたときは美芳がいつも俺のことを報告してくれてたようだった。
両親はまさか美芳が俺を監禁してるなんて思いもしなかっただろう。
それだけ美芳の信頼は厚かった。それが今回多くのことを知られてしまった。
それでも両親は俺を受け入れてくれる…
「更紗。帰ろっか?」
素直になろうって決めてた…親孝行しなきゃって思わせてくれたのは賢人だ
「更紗。大学どうする?復学する?」
「うん。する。それが美芳のためにもなるかもしんないし…」
美芳は意識が戻ったみたいだけど俺との面会は拒絶した。
それが美芳の優しさだと思う…手紙が届き別れを告げられた。
俺が美芳に出来ることは…俺が普通の生活を送ること。それが美芳にとって一番のことだと思うから…
美芳が後悔しないよう…俺は精一杯生きるから…
美芳…救ってくれてありがとう…
「更紗。家に戻っておいで。昔みたいに贅沢な暮らしはさせてあげられない。古い小さな家だけど。おじいちゃんもおばあちゃんもいるし更紗の部屋ってないけど…どう?更紗」
「うん。戻る。戻っていい?」
これからもう一度家族孝行しよう…少しでも…何かしらかえそう
おじいちゃんの家は昔ながらの一軒家。小さい頃はあんなに頻繁に行っていたのにいつからか寄り付かなくなってしまった場所。
「おかえり。更紗」
「ただいま」
実家に戻った俺は直ぐに復学し少しでも家計の足しになるようにアルバイトを始めた。
これまで働いたことなんてないから苦労したけれどやりがいを感じていた。
借金は全て返し終わっていたが相変わらず細々と暮らしていた。
退院後賢人とも会っていない。
それどころじゃなかったし
でもとても充実した生活だった。生きてるって思えた。
不特定の男を作ることもしなくなった。
そうして、時は過ぎていく
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