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更紗の場合/32
一頻り泣いて落ち着いた俺は店長を見つめた
「大丈夫?落ち着いた?」
コクりと頷くと嬉しそうに笑う
「良い子。そろそろお迎えが来るよ」
お迎え?誰が?親?
「こんにちは」
「来たみたいだね。待っててね」
しばらくすると扉が開いた
「更紗。帰ろ」
何故か賢人がそこにいた
「賢人はね俺の従兄弟なんだよ。更紗雇って暫くしたときに君と同級生だったと知ったんだけどね」
「更紗?大丈夫?」
賢人が俺と目線を合わせ聞いてきた
うなずくとふわりと笑う
「明日からご両親お仕事で家を開けるでしょ?その間賢人の家にいて?」
なんでそんなことまで知ってるんだろう?
「更紗がいなくなって一緒に探しててそこから連絡をずっと取り合ってたんだよ。たまたま同じ日に仕事で家を開けないとならないから心配でって連絡きて賢人がたまたま明日から連休だったからお願いしたの。俺は明日から研修で店に泊まり込みになっちゃうしおじいちゃんおばあちゃんは今施設でしょ?」
俺がいない間祖父母は体調を崩して二人して入院し、そのあと俺を探すことに集中して欲しいからって二人して施設へ預けてくれと頼んできたらしく家には両親しかいなかったのだ
だから誰もいない間に…って思ってた。お見通しだったってことか…
「行こっか?」
賢人に手を引かれ店をあとにした
賢人は高校卒業してからずっと独り暮らし。卒業と同時に家族は海外へ行ったから
賢人は俺の手を離さないまま車へ俺を押し込む。
運転席に座ると再度手を重ねてきた。
「ねぇ。更紗…もう…大丈夫だから…ね?俺のことも頼って?」
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