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更紗の場合/50
賢人side
「更紗は多分不幸にしたって思ってる」
そうなんでしょ?更紗は何も悪くないのに…
「でも違う。それは更紗の思い込みだって」
お願い…美芳さんの想い…伝わって…
「更紗のためじゃなく自分のため動いたんだって。
更紗がいたからとても幸せだったって…確かに手は汚してしまった。でも更紗が無事だったからそれが自分にとってはとても大きな幸せだって…」
本当に…幸せそうに…そう話してくれたんだよ?ねぇ…更紗…君は愛されていたんだよ…入り口は間違っていたのかもしれない…でも更紗と過ごしたあの時間は美芳さんにとって幸せな時間だった…更紗も…そうでしょ?
「更紗。更紗はこれまで沢山のことあって参っちゃってるかもしんないけど更紗のせいで不幸になった人なんて一人もいないんだよ?ご家族だって、佐知くんだって。…智輝だってそう言ってた。更紗がいたから生きてこられたんだってね。更紗がいなければおそらく自分はもっと壊れてしまっていたって…更紗のせいで不幸になったなんて…むしろ自分は更紗に感謝してるって」
ねぇ…更紗…君に救われた人は沢山いるよ?
「智輝…」
そうだよ…智輝だって…そうなんだ…更紗が複数の恋人がいてもいいって言わなかったら…きっと智輝は今でもずっと心が寂しい人…一人でからくり人形のように生きていただけ…沢山の人と同時に付き合ったから…そして…同時に失ったから…感情と言うものが生まれたんだ…きっと…そうだよ?
「ねぇ。俺だってそうだよ?更紗が笑ってくれるだけで心がぽかぽかするんだよ?更紗が名前を呼んでくれただけでとっても幸せだって思えたんだよ?更紗に触れること出来て…更紗にわがままいってもらえてすごく嬉しかったんだよ?だから…そんな顔しないで?ね?更紗…俺は更紗の側にいたい…な…
…なんて…気持ち悪い?」
声が出なくなったと知って…どうしていいかわかんなくて…ただ側にいた…ほんの数時間…そのわずかな時間で君の声を取り戻せた…俺にとってはとても大きなことだった。俺が側にいたから声が出たんだって柄にもなく調子にのって…嬉しかった…嬉しかったんだ…呼ばれて幸せだったんだ…出来るならこれからも更紗の隣にいたいよ…側にいさせて…それができたら…俺は不幸になるなんて思わせない…更紗の笑顔を守って見せるから…気持ち悪いかな?重たいかな?
「俺は…生きていていいの?こんな疫病神…生きていていいの?」
もう…更紗…何で君は…
更紗としっかり目を合わせたくて額を合わせた。
「俺は更紗にここにいて欲しい…生きていて欲しいよ?俺だけじゃない。みんなそう思ってる…更紗…ねぇ…そんな悲しいこと言わないで?俺たちを否定しないで?更紗を愛する人たちを否定しないで?」
伝わって…お願い…
「賢人…」
「更紗…俺はお前が好きだよ?生きていて欲しいよ?
何度でも言うよ?生きていて…お願い…更紗…苦しかったら…辛かったら俺が肩を貸すから…ねぇ?俺じゃだめ?俺じゃ頼りにならない?」
この好きがどんな風に更紗に伝わっているかはわからないけれど…
「賢人…」
大粒の涙を流す更紗…ほら…こんなにも綺麗な涙が流せるんだ…それをそっと拭った。
あーあ…綺麗な目が真っ赤になっちゃって…もう…
「更紗。更紗はみんなに愛されているよ?だから…生きて?」
更紗に抱きつかれる。堰を切ったように泣く更紗を抱き締める。落ち着くまでトントンと背中を叩きながらあやす…更紗はひたすら泣いた…俺の腕の中で…ずっと…俺の腕の中が更紗にとって安らげる場所になるといいのに…
「沢山沢山…幸せになる。更紗は幸せになるんだ…絶対…俺が保証してあげる」
幸せにしてあげられるのが俺ならもっと嬉しいけれど…
「け…と…」
潤んだ瞳の更紗…たまらなくて…どうにか慰めてあげたくて…
「更紗…キスしていい?」
そう問うた…
「うん…」
少し照れながら首肯く更紗に悶える…もう…こんなお願いそう簡単にOKしちゃだめだよ…そう思うけど…我慢できずそっとキスをした…
好きになってくれるといいな…俺のこと…そうじゃなくても…側にいさせてもらえたら…俺はとても嬉しい…とても…幸せ…
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