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更紗の場合/54
賢人の作ってくれた朝食。
美味しくて…気付けば完食してた…
「ごちそうさまでした」
「良かった。全部食べられたね」
賢人もごちそうさまをして俺の隣にやって来てそっと見下ろす。そしてあの優しい笑顔で子供をあやすように頭を撫でる。
くすぐったい…
「賢人ぉ。やめてよ」
「あ…髪ぐちゃぐちゃ」
「もう!賢人がやったんでしょ」
「ごめんごめん」
そろそろと整えてくれる賢人の長い指…
「賢人…」
「ん?」
「賢人…」
「何?」
「賢人!」
「ちょっ…わっ…」
賢人に思い切り抱きつく…好き…どうしよう…俺こんなに惚れっぽくなかったのに…どうしよう…賢人の事が好き…どうして?
…だめ…賢人にとっては友人の一人でしかないのに…
「更紗?どうしたの?…また泣いてる…もう…更紗…こんなに泣き虫だったっけ?…可愛いからいいけど…」
「…それぇ…やめてよぉ…可愛いとか…言い過ぎだよぉ…えっ…ぐっ…」
「ごめん!そんなに…泣くほど…嫌だった?ごめんね」
「だって…だって…好きになっちゃうでしょ?」
「え?」
あ…やってしまった…これで…引いたかな…もう終わりかな…でも…
「なぁんて!冗談だよ!!もう!賢人は騙されやすいんだから…」
まだ…もう少し…側にいさせて…俺の気持ちに気付かないで…
「は…はははっ…冗談かぁ…ざぁんねん…俺は…更紗のこと…好きなのにな…」
「え…?」
「俺は更紗が好きだよ?ずっと…側にいたいと思ってるんだ…更紗の…特別になりたいって…ごめんね。更紗にとっては俺はただの友人でしかないのにね…ごめん…でも…俺は大丈夫だよ?利用してくれていいよ?いくらでも利用されてあげる…いくらでも…更紗が…好き…大好きなんだ…」
賢人の真摯な眼差しに言葉に詰まる…
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