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更紗の場合/55

賢人side 俺の作った朝食を更紗が食べてくれている。それだけで大袈裟だけどとても感動してた。だって昨日までちゃんと食べられなかったのだから…。 黙々と口一杯に頬張りながら食べている更紗の可愛い姿に笑みが溢れる…やっぱり…可愛い…食べてくれただけでも感動してたのにそれを更紗は完食してくれた。飛び上がりたいほど嬉しい…まぁ…耐えるけど… 「ごちそうさまでした」 満面の笑みで手を合わせごちそうさまをしてくれた更紗…はぁ…可愛いよぉ…抱き締めたいよぉ…でも…出来ないから…自分も完食し更紗の座る椅子の隣へ立つ 「良かった。全部食べられたね」 あくまでも冷静に…取り乱しちゃだめ…でもにやける…そっと更紗の頭を撫でた わしゃわしゃと撫でていると更紗が首を竦めた…はぁ…可愛い… 「賢人ぉ。やめてよ」 あ…顔真っ赤になってる…抱き締めたい…でもだめだ… 「あ…髪ぐちゃぐちゃ」 ごまかすようにいうと更紗がぷぅーっと頬を膨らませ睨む…とはいえ俺が立ってるから睨んでても上目使いになっちゃうしうるうるしてるから怖くないし…やっぱり…可愛い… 「もう!賢人がやったんでしょ」 「ごめんごめん」 これ以上怒らせたらだめだね。そろそろと髪を整える。そしたら急に更紗がポツリと俺の名を呼んだ 「賢人…」 「ん?」 何か…顔赤い…熱ある?大丈夫かな? 「賢人…」 あれ?どうした?なんか…勘違いしそうな視線で見られてるんだけど…でも多分これは俺が自分の都合のいいように変換してるだけ?…だよね… 「何?」 何も答えない更紗…そんな目で見ないで…我慢している気持ちが飛び出してしまいそうだから… 「賢人!」 「ちょっ…わっ…」 急に抱きつかれ驚いたけど更紗が椅子から落ちないように支えた。更紗?肩が震えてる…そっと顔をあげさせる…目を合わせて問う 「更紗?どうしたの?…また泣いてる」 やっぱり泣いてた…体辛い?無理に食べて気持ち悪くなった?大丈夫?どうしていいかわからなくて… 「…もう…更紗…こんなに泣き虫だったっけ?…可愛いからいいけど…」 何て茶化してみる…でも心臓はバクバク五月蠅い… 「…それぇ…やめてよぉ…可愛いとか…言い過ぎだよぉ…えっ…ぐっ…」 「ごめん!そんなに…泣くほど…嫌だった?ごめんね」 そんなに嫌だったんだ…ごめん…だって…あまりにも可愛いから…でも…更紗も男。可愛いって男に対しての誉め言葉ではないから…でも…更紗から返ってきた答えは想像したのと違った… 「だって…だって…好きになっちゃうでしょ?」 「え?」 好きになっちゃう?本当?…大歓迎だよ!好きになって…更紗… でも次の言葉… 「なぁんて!冗談だよ!!もう!賢人は騙されやすいんだから…」 冗談?今の俺にとっては悪い冗談だよ…俺…こんなに…更紗が好きなのに… 「は…はははっ…冗談かぁ…ざぁんねん…俺は…更紗のこと…好きなのにな…」 あ…本音が漏れてしまった…隠さないと…誤魔化さないと…更紗にとって俺はただの友人なのだから… 「え…?」 なのに…更紗の表情を見たら…期待してしまった…もう…誤魔化せない…だめだったらまた考えればいい… 「俺は更紗が好きだよ?ずっと…側にいたいと思ってるんだ…更紗の…特別になりたいって…ごめんね。更紗にとっては俺はただの友人でしかないのにね…ごめん…でも…俺は大丈夫だよ?利用してくれていいよ?いくらでも利用されてあげる…いくらでも…更紗が…好き…大好きなんだ…」 あぁ…自分で言ってて意味わかんない…もう頭は混乱してて智輝みたいにスマートに伝えられない… 更紗…どんな顔してる?怖いのに見つめてしまう…更紗…どう思ってるの…聞きたい…聞きたくない…どうしたらいい?どうするのが正解?

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