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空雅の場合/11
八尋side
ねぇ。空ちゃん。俺を通して誰を見てる?
「ともき…」
…この名を聞いたのは一度だけじゃない…また…切なそうに彼を呼ぶ…
「ともきくん…君はいつ空ちゃんを解放してくれる?俺に空ちゃんを頂戴…」
眠る空ちゃんに口付けて帰ろうと体を起こそうとするけど空ちゃんが掴んで離してくれない…
「もう…空ちゃん…そういうの…ずるいよ」
結局あまり下手に動くとやっと眠れた空ちゃんが可哀想で…起きたらとても怒るだろうしもう呼んでもらえなくなるかもしれないけれど…でも今は…
「空ちゃん…俺を好きになって…」
そう強く願いもう一度きゅっと空ちゃんを抱き締めた。
気が付けば自分も眠っていて起きたのはもうお昼過ぎだった
「ん…あ…寝てた…」
空ちゃんは相変わらず眠ってる…
俺を抱き締めたまま…
「…空ちゃん…」
瞼に口付けるとゆっくりと目を開いた
「ともぉ…」
「…どうしたの?」
「とも…大好き…」
苦しい…でも…そんなこと言えるわけ無い
「空ちゃーん!俺ともくんじゃないよぉ!」
「んんっ…とも…八尋…さ…」
「ん。おはよ」
「あれ…何でまだいるの?」
「空ちゃんが離してくれなかったの」
そう言うと自分の寝姿をみて状況を察した空ちゃん
「あぁ…ごめんねぇ。明日早いのに」
「大丈夫だよ。明日の午後の便だから」
「ごめんね…その…名前間違って…」
「その人のこと大好きなんだね…思いは伝えないの?」
「…あのね…ともはね僕の高校のときの元カレなの…」
初めて聞く…過去の人の話…聞きたい…聞きたくない…でも…
「八尋さんととも少し似てるんだよね。」
「そうなの?」
「うん。雰囲気がそっくり…」
「ずっと…身代わりにしてた?」
「違うよ!」
「…うん。まぁ。俺は空ちゃんと過ごすの楽しいからどんなんでもいいけど。なんならこれからはともって呼んでくれてもいいよ?」
「八尋さん…」
「ふふ…2年こんな関係なんだもんいくらでも甘えてよ」
「…ともの話…聞いてくれる?」
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