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空雅の場合/21
そうしてスタートする。
いきなりプレイを要求されるかと思っていたのだけれどそんなこともなく…
世間話をひたすらしてた。
「萌葱。いいの?僕のこと抱かなくて…」
「みやび…えっと…あの…これから外に一緒に出掛けてくれる?」
「別に構わないよ。マネージャーさんから許可はもらってるの?」
「うん。大丈夫。マネージャーにたまには遊べって言われてここを教えて貰ったから」
「そうだったんだね。じゃあ出掛けようか。指定の服はある?」
外に出るときはお客の好みに合わせるため数種類の衣装が用意されている
「いや。みやびの普段着でいい」
「うん。わかった。ちょっと着替えてくるから待ってて」
オーナーに連絡を入れて外に行く報告をする。外に行く際はもし何かあったときのために黒服の人が付いてくる。
勿論人混みに紛れるプロだからお客様に気付かれたことないけど
「お待たせ。どこ行く?」
「普通に買い物とかゲーセンとか行きたい」
萌葱の行きたいところは学生時代一般的に友人たちと遊ぶルート。
「俺ね双子なんだけど色々あって普通の学生みたいなことしたことないんだ」
「そうだったんだ」
「うん、まぁその頃の色々で…学生時代の友人とは誰一人として会ってもないし出掛けたりもしない。業界の人だと俺のイメージって言うのがあるから気は抜けなくて…だからこうして同世代の子と遊べることが嬉しい」
「萌葱が楽しいのなら良かった。もう暗くなったねぇ。これからどうする?どこかで食事でもいいし部屋に戻ってもいいよ」
「ご飯一緒に作りたい!」
「わかった。じゃあスーパー寄って帰ろ」
マンションの近くのスーパーに立ち寄り外に出る
「萌葱じゃん!!」
急に声がかかった…
「…」
「おい!無視すんなよ!」
「ごめんね…巻き込んで」
「ううん。」
「萌葱!!」
「…離して」
これまでとはうってかわり氷のように冷たい視線を相手に向ける萌葱…
「悪いけど連れがいるから。」
「へぇ。相変わらず男好きなんだ?このこと事務所に報告したらお前のクリーンな印象ってどうなるだろうなぁ…」
「…」
萌葱がきつく唇を噛んでいる。手は震えてる…何があったの?萌葱…
「悪いけど急いでるんだ。どいてくれる?」
「へぇ…きれいな顔してるんだねぇ。君」
「触らないで」
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