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空雅の場合/32
萌葱の話に何とも言えなくてただただ背中を撫でることしかできなかった
「高校卒業と同時に…緋色は家を出て海外に…緋色の突然の態度の変化の理由は結局聞けないまま…今はもう俺とは連絡は取れない…緑は未だに連絡してくることもあるけど気持ちに答えるつもりもない。会ってないし今後会うつもりもない…両親からは緋色は向こうで恋人ができて幸せに暮らしていると聞いてる…でも…俺は…まだ…どうせ離れていくのなら…ちゃんと…振って欲しかった…」
昨日までの僕と彼を重ねてしまう。状況はやっぱり萌葱の方が深刻なのかもしれないけれど
「今日のやつはその中にいたやつで…面白半分であいつらと一緒になってやってて早い段階でそいつは来なくなったんだけど…まさか…まだ…あのときの動画を持ってるなんて…」
「今頃ちゃんと裁かれているはずだよ。大丈夫」
「でもあいつが持ってたってことは…他のやつも…」
「…それは無いとは言えないけど…」
「怖い…とにかく怖い…イメージの問題も勿論あるけどやっぱり家族に迷惑をかけることが耐えられないし緋色にまたあのときのこと思い出させて苦しい思いをさせたくない…せっかく…幸せを掴んだのに…」
「萌葱。ご両親は緋色くんと連絡は?」
「してるみたい。でも…」
「何も聞けない?…」
「うん…俺が元気かどうかは聞いてくるって話してくれたけどそれ以上は何も…」
「会いに行っちゃえば?今どんなことやってるのかどうしてるのか様子がみれれば…どんな生活を緋色くんがしていても萌葱は先に進めるんじゃない?」
「…怖い…」
「そう…」
『みやび。さっきのやつ処理完了したよ。色々問い質したら他の映像は残ってないことを確認した。もう安心して良いと…伝えて』
『了解』
「空雅?」
「萌葱。安心して。あの映像は全て処理されもう存在しないようだよ。」
「良かった…」
「うん。少しは元気出た?」
「うん」
「あんまり食欲はないかもしれないけど何も食べないのは体に悪いし仕事にも支障をきたす。だから簡単なもの作るから食べて」
「ありがとう…」
弱々しいが笑顔を向けてくれた。僕と過ごすことで少しでも傷が癒えればいいな…
そう思えたのも智輝と話したからかな
その日は時間一杯までゆっくりと二人で何もせずただのんびり過ごした。
それから定期的に萌葱は僕を指名してくれるようになった。
少しずつ元気になっているみたい。
この仕事は僕は嫌いじゃない。こうして癒すことも出来るのだから…
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