222 / 321

空雅の場合/35

萌葱との時間はとても心地よかった。 久しぶりに十分満足を得られた行為だった 「はぁ…はぁ…萌葱…本当に初めてだったの?」 「そうだよ。初めて…初めてが空雅でよかった」 「ふふ…そういってもらえてよかった」 気持ちの良い脱力感…萌葱の白い肌に顔を埋める 「大丈夫だった?」 「うん。凄く…気持ちよかったよ。久しぶりに大満足…って…僕がそれじゃダメだけどね。」 「ううん。空雅がよかったならよかった。俺の独り善がりじゃないってことでしょ?俺も凄くよかったから。何か…先に進めそうだよ。ありがとう萌葱」 「うん。そろそろ時間だね…」 名残惜しいけれど… 「寂しい?」 「うん。寂しい。もっと一緒にいたい…」 「俺も一緒にいたい…でも…行かなくちゃ…仕事だから」 「ん…じゃあね」 またねとは言わなかった。だってこれで萌葱は進めるはずだから…僕に固執しなくたって良いから。 今日で最後かもしれないから…萌葱を見送って… 「好きだったな…」 確信に変わったこの思いは相手には伝えられないもの。 僕がここにいる限りは何も…望めないから。 「さて…お仕事頑張りますか」 それからは忙しくて物思いに更ける時間もなくて一日が終わる。 そしてそれから数日の時が流れた 「みやび。明日から3日休みね。」 「3日もくれるの?いいの?」 「お前前回から休まなすぎ。もう一ヶ月くらい休んでないよ。お前は平気でも俺が心配。だいたい最近頑張りすぎ。何かあった?」 「何でもない」 「…何かみやび隠すの下手になったね」 「え?」 「木築さん」 「あー…ははっ…でも大丈夫だよ。ちゃんと出来るよ」 「うん。知ってる。一先ず休みな」 「はい」 たった数日萌葱に会えなかっただけなのに…どうも弱くなっていたらしい 会いたくてでも会えなくて…どうにもできない想いを出すこともできず帰路につく

ともだちにシェアしよう!