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空雅の場合/35
萌葱との時間はとても心地よかった。
久しぶりに十分満足を得られた行為だった
「はぁ…はぁ…萌葱…本当に初めてだったの?」
「そうだよ。初めて…初めてが空雅でよかった」
「ふふ…そういってもらえてよかった」
気持ちの良い脱力感…萌葱の白い肌に顔を埋める
「大丈夫だった?」
「うん。凄く…気持ちよかったよ。久しぶりに大満足…って…僕がそれじゃダメだけどね。」
「ううん。空雅がよかったならよかった。俺の独り善がりじゃないってことでしょ?俺も凄くよかったから。何か…先に進めそうだよ。ありがとう萌葱」
「うん。そろそろ時間だね…」
名残惜しいけれど…
「寂しい?」
「うん。寂しい。もっと一緒にいたい…」
「俺も一緒にいたい…でも…行かなくちゃ…仕事だから」
「ん…じゃあね」
またねとは言わなかった。だってこれで萌葱は進めるはずだから…僕に固執しなくたって良いから。
今日で最後かもしれないから…萌葱を見送って…
「好きだったな…」
確信に変わったこの思いは相手には伝えられないもの。
僕がここにいる限りは何も…望めないから。
「さて…お仕事頑張りますか」
それからは忙しくて物思いに更ける時間もなくて一日が終わる。
そしてそれから数日の時が流れた
「みやび。明日から3日休みね。」
「3日もくれるの?いいの?」
「お前前回から休まなすぎ。もう一ヶ月くらい休んでないよ。お前は平気でも俺が心配。だいたい最近頑張りすぎ。何かあった?」
「何でもない」
「…何かみやび隠すの下手になったね」
「え?」
「木築さん」
「あー…ははっ…でも大丈夫だよ。ちゃんと出来るよ」
「うん。知ってる。一先ず休みな」
「はい」
たった数日萌葱に会えなかっただけなのに…どうも弱くなっていたらしい
会いたくてでも会えなくて…どうにもできない想いを出すこともできず帰路につく
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