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空雅の場合/36

ゆっくりと歩いていると突如呼ばれた 「空ちゃん!」 誰? 声をした方へ目を凝らす 「くうちゃーん!!!」 「わぁっ!!」 「なぁにしてるのぉ?」 「仕事帰りです」 「そっかぁ。最近八尋と会ってないでしょ?」 美也さんだった。 「あ!そうだ!ちゃんと名乗ってなかったね。僕は葛西 美也(かさい よしなり)だよ。」 「え?みやさんじゃないんです?」 「よりなりって感じじゃないってみんなそう呼ぶの。漢字これだから」 名刺を指差しながらにこりと笑顔を向ける 相変わらず可愛らしい。 「ネイリストなんですね」 「そだよぉ!出張でしてるの。この間もお客さんとこに行く途中でやっちゃんにあったから通り道だし送ってもらってたの」 「そうだったんですね」 「んでぇ。何か勘違いしてたらやだから言うけどぉ俺とやっちゃんはただの幼馴染みで俺には恋人いるんだぁ。へへっ」 可愛い笑顔でそういう美也さんはどうみても年上には思えない 「八尋さん言ってました。特別な人って」 「えっへへ。そうかもしれないね。やっちゃんあの見た目でしょ?すごーく女の子にモテたの。でもね、やっちゃん女の子苦手なの。モテすぎておいかけられ過ぎてね。時には勘違いされて何かいきなり家に押し掛けられたり無理矢理押し倒されたり。やっちゃん優しいから女の子を引き剥がすのも苦労してたの。んでぇ、僕が恋人のふりをして学生時代は過ごしたからね。あ。その時から今の彼と僕は付き合ってるから彼もやっちゃんと仲良しだよ」 「そうなんですね」 まぁ。確かにモテるだろうな。見た目すごく綺麗だし優しさは恐らくニセモノじゃなくてホンモノだと思うから 「そのあとやっちゃんにも恋人がいたんだけどね。きいてる?」 「聞いてます。彼のことを忘れられないって…バーのマスターの弟さんでしょ?」 「うん。そのやっちゃんがやっと好きになれた人がいるの」 そうなんだ。好きな人できたんだ。良かった。最近会ってなかったから知らなかった。

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