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空雅の場合/41

八尋side 本当に偶然だった。普段は使うことのない電車に揺られ降りた先に見た空ちゃんの姿。 男に手を引かれてた。この間のイケメンとはまた違う…友達?にしては年が離れすぎてるし…セフレ?彼氏?わかんないけど空ちゃんと俺はただのセフレ…追いかける権利はない。 二人は多目的トイレに入っていった。 やだな…そこで…事に及ぶのかな… 最近は呼んでもらえない…本格的に飽きられた?だったら俺たちはセフレですらない…赤の他人… 海外出張から戻って何度も連絡しようか迷った末出来なくて時が過ぎてしまって…何も出来なかった…寂しいな… 今ここで可愛く啼いてるのかな? でもなんだか様子がおかしい… 「どうして!?俺の事愛しているでしょ!?なのにどうして!?」 「…」 「ほら。喜んでるじゃない。苦しいの好きでしょ?」 空ちゃんの声が聞こえない。でもすごく嫌な予感がした。このトイレなら簡単に鍵開けられそう… そう思って鍵を開ける。回りの人は自分の事ばかりだから恐らく俺のこんな行動なんて気にも止めない。 一緒に来ていた部下に取り敢えずそこで待機してもらって開ける。 「ほら!俺の事愛してるでしょ?ね?ね?空雅。だから一緒に逝こうよ…」 「空ちゃん!!」 空ちゃんがぐったりしてる…男が顔だけで振り返り見えた手元。空ちゃんの首を締め上げていた 「本城!!駅員呼んできて!!今すぐ!!」 本城は陸上部だったらしいから早くここへ戻れるはず 「あんた誰?俺たちの邪魔しないでくれる?俺と空雅は愛し合ってるんだからずっと側にいないとならない」 「何いってるの?本当に愛し合っているのならこんなのは間違っている」 「どうしてみんな邪魔するの?俺は…俺は…空雅といたいだけなのに。みんなみんな俺たちを引き離そうとする…どうして…どうして!」 男はまた空ちゃんに向き直るとさらに締め始めた。 もう限界だった 「いい加減にしろ!!」 「離せ!!俺は空雅と一緒に逝くんだ!!空雅も望んでるんだ!!空雅を殺して俺も!!」 男を引きずり出す。丁度その時駅員がやって来た。ぐったりしている空ちゃんと男のさっきの叫び声で状況を察したようだ。 その場で警察と救急車を呼んでもらって駅は騒然となっていた。 「空ちゃん!!空ちゃん!!」 空ちゃんは意識は失っているがちゃんと呼吸もしてる…きっと大丈夫… 脱がされていた服を着せて抱き締める。 「お知り合いですか?」 「本城がおずおずと聞いてきた」 「あぁ…友人なんだ…本城ありがとう。呼んできてくれて」 「いえ…。でも…自業自得じゃないです?そんな脱がせやすそうな服着てるんだし」 「本城…俺の友人を侮辱してるの?」 「いえ…すいません…」 そうなのだ今日の空ちゃんは何だかいつもとちがってセクシーな格好をしてる… きっとどこかへ…誰か…セフレと会うため? そもそもこの電車は空ちゃんの家とは逆方向だから 「ご友人でしたら付き添いを」 そう声がかかったので本城に伝え一緒に乗った ずっと空ちゃんの手を握ってた。 意識を失ってるので様々な検査をされて病室に戻ってきた。 特に以上は見られないのですぐに目を覚ますだろうとの事だったので側で見守った。 「空ちゃん…」 「ここ…」 小さな呟きが聞こえて顔を除くと空ちゃんが気が付いた。本当に良かった… 「よかったぁ。目ぇ覚めた?」 「八尋さん?」 「大丈夫?どこか痛いとこない?」 「ない…けど…何で…」 「うん。俺も今日はたまたま同じ電車に乗ってたの。普段は電車は使わないんだけどね。降りた駅で空ちゃんの後ろ姿見かけてお友だち?彼氏?と一緒にいたから声かけなかったんだけど…トイレの中に入ってってその前を通ったとき空ちゃんの声が聞こえて何かおかしかったからドア開けて入ったら…空ちゃんぐったりしてて…ビックリした…男の人何か不穏なこと呟いてたから取り敢えず引き剥がしてつれてきちゃったけど…望んでしてたことだったならごめん」 「…ううん…ありがとう…あの人はねお客さんだった人なの…」 「お仕事の?そんな人がなんで?」 「僕への執着が酷くて…店でも…」 俯いたところを見ると恐らく以前もお店で似たようなことがあったのだろう。 「そっか…怖かったね…ごめんね。もっと早めに声かけたらよかったね…抱き締めても良い?」 こくりと頷いたのに嬉しくなる…久しぶりに抱き締めた空ちゃんは相変わらず良い匂いで暖かくて柔らかだった 「空ちゃんがぐったりしてて焦ったよ…良かった…良かった…」 本当に…心配したよ…そんな権利が俺にはないってわかってるけれど…今は…少しだけて空ちゃんを感じさせて… 「八尋さん?」 声が震えてたかな…?気付かれちゃったかな…情けないな… 「心配させてごめんね。助けてくれてありがとう…」 空ちゃんが抱き締め返してくれて嬉しかった…もう会えないかもしれない…何度も何度も繰り返す思い…もう少しだけ側にいさせてください… 「うん…うん…」

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