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空雅の場合/43
「もしもし。ごめんねぇ。ちょっと色々あって今病院。今日行けそうもないや」
『そうなの?ざんねーん。ならまたね』
「うん」
『病院どこ?』
「えと…〇〇総合病院」
『そっかぁ。何時に病院出るの?』
「15:00頃にって話だったよ」
『はいはぁい。じゃね』
もう少し眠って…そしたら帰ろう。
あいつはどうなったんだろう…もう目の前に現れないだろうか…家まで知られている…
結局眠れなくて時間になり帰る準備をした
「お世話になりました」
医師と看護師に声を掛けてロビーへ行くとキラキラする頭
「あれ?何で?」
「空雅。おかえりなさい。もう平気か?」
「うん。でも…どうしたの?」
「お姫様のお迎えだよ」
「え?お姫様って僕の事?」
「うん。せいかーい!って…なぁに?嬉しすぎて言葉にならない?」
「いや。意外…」
「来たの?」
「うん」
「たまには紳士っぽく。ね?さぁてお手をどうぞ。お姫様」
僕の手を取って歩き出す姿は本当の王子さまのようだった。背も高くていつもよりも落ち着いた格好がそう見せるのかもしれない。
看護師や受付の女性達がその姿に頬を染め見惚れている姿が目には入った。その羨望の眼差しから逃れたくて少しだけ歩みを早めた。
駐車場へつくとそこには綺麗に磨かれた一台の車が停まっていた
「ほら。乗って」
車の助手席を開けて座らせてくれる。僕が座ったのを確認して運転席に回った。
「乗せんのはじめてだね」
「うん。」
「ふふ…」
「あ…安全運転…お願いします」
先ほどとは売って変わりいつもの軽薄そうな笑みを張り付けた相手におねがいする
「ぶはっ!!安心してよぉ!俺これでも優良ドライバーよ」
ぽんぽんと僕の頭を撫でるとゆっくりと発進した
いっていた通りとても丁寧な運転で相当意外だった
「俺んちでいい?」
「え?でも…」
「今日は抱かないよ。たまにはまったり過ごそ。ね?撮り溜めたやつ見るの手伝って」
「手伝うもなにもただ見るだけじゃん」
「いいのぉ。空雅が帰りたければ送るけど?でもさ今更だけどお前の家わかんないや」
こいつと会うときはこいつの家ばかりだったからそれも仕方ないことだろう。
あの男が自宅を知ってるのであれば帰宅したくない…
「連れてって。君の家に」
「りょーかーい」
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