231 / 321

空雅の場合/44

自宅について車を止める姿は女の子達が好きなあの姿。 「本当に運転うまいんだねぇ」 「そ?ありがとう」 鍵をくるくる回しながら部屋に続くエレベーターに乗る。 「仕事は?」 「ん?空雅知ってるでしょ?俺パソコンさえあればどこでもできんの。今大きなやつはないから平気ー!」 「そう。」 「本当に久しぶりだねぇ。どのくらい?ん~3か月くらい?もっとかな?」 「多分半年くらい?あ。でもひと月?ふた月くらい前に街でばったり会ったからそれ考えると…」 「あれは会ったうちに入るかなぁ。本当にたまたまだったじゃーん!お茶しただけだし。空雅は相変わらずいろんな人引っ掻けてんの?」 「そんなとこ」 「相変わらずオモテになるようで」 「小金沢サマには負けます」 「もう!相変わらずそれでからかうのね。下の名前で呼んでよぉ」 「ふふ…紫水。迎えに来てくれてありがとう」 「もう!そんな可愛い顔しないでよ。我慢できなくなっちゃうでしょ?」 「我慢しなくてもいいけど?どこも痛みとかないし」 部屋の扉が締められると早急にキスをして来た 「空雅。本当に勘弁してよぉ。こんなとこ…アザあるんだもん…しないよ。怖いでしょ」 包帯が巻いてある首筋をつつっと優しく撫でながら紫水が言う。 この下には男の手の痕が残っている。 「どんなんなってるか知ってるの?」 「あぁ。新しく入ったっぽい若い看護師さんに聞いた。お前が運ばれてきた理由」 「個人情報…」 「俺が魅力的だからねぇ。ついじゃないのぉ?」 「そうですねー」 「うわっ!感情こもってないし」 紫水といるときはかなり砕けた感じで話ができる。紫水が軽いからだとは思う。一緒にいるときは結構楽しいのだ。だから笑える。 街でバッタリ会ったその日は少しだけお茶した。その時は仕事用のどっちかって言うと爽やかな感じの格好していたから紫水に視線が集まってたっけ。 紫水は背も高く顔立ちも綺麗なので喋らなきゃ周りを惹き付けてしまうのだ。 紫水はその事をよくわかっててその場その場で自分の立ち振舞いを変える。それを容易くしてしまうのだ。 そういった面もあるから仕事だってうまくいったに違いないと僕は思っている。 「カフェオレでいい?」 「うん。ありがとう」 「あの時の待ち合わせ間に合ったの?」 「うん!その夜最高だった!」 「へえ?」 「いつもね優しい人なんだけどその日は獣みたいに激しく求めてくれてもうね!良かったよ」 「あぁ…例の人だったよね?その日約束してたの」 「うん」 「俺も一度会ってみたいなぁ。お相手お願いしたい」 「紫水ネコできんの?あの人バリタチだから」 「一応ねぇ。出来るよぉ。まぁやっぱりタチのがいいけどね」 「たぶんあの店にいったらいるかも?あぁ…でも本命できたっぽいんだよねぇ」 「えぇ!じゃあ会えないのかなぁ?」 「どうかなぁ?」 紫水には八尋さんの名前こそ告げてはないけれどどんな人なのかはよく話してた。だから存在を知ってるのだ

ともだちにシェアしよう!