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空雅の場合/46
この感じ…
「更紗んちみたい」
更紗の家には同じようにグランドピアノが置いてある。父親の企業が傾いたときもピアノだけは手放せなかったと言っていて今もたまに弾くって言ってたっけ…
「更紗?」
「うん。幼稚舎から一緒だった同級生だよ」
「更紗…金城?じゃないよね?」
「え?そうだよ。金城更紗」
「へぇ!あいつと知り合いなんだぁ」
「知ってるの?」
「ピアノ教室で一緒だったことがある。コンクールでいつもあいつと争ってた。あいつどうしてんの?」
「僕もわからない。最近連絡取れないんだよね。元々あまり取るタイプでもないんだけど。お互いね」
この頃の更紗は誰とも連絡がとれなくて。でも更紗は元々そういうやつだから気にしてなかった。数年後にこの時何があったか知ったのだけれど
「紫水は更紗とはしたことある?」
「えぇ?流石にないな。一緒だったのって小学生の時だし」
「そうなんだ。紫水は今も弾くの?」
「仕事の息抜きにね。弾こうか?」
「うん!!」
ピアノの前に座りゆっくりと目を閉じた。
目を開いたらもう雰囲気が変わって思わず目を奪われた。そして長い指が滑るように鍵盤を弾き出す。
踊るように動き回る指先がとてもきれいだ
僕にはよくわからないけれどこの曲…聴いたことある
「ラ・カンパネラ…」
あとはただただ聞き入っていた。言い方は悪いがこんなに見た目が軽薄で何も考えてなさそうなのに紫水が奏でる音はこんなにも繊細でこんなにも熱くてこんなにも心が揺さぶられる…何故か涙がこぼれて…拭うこともせずただ聴きいっていた
「空雅ーおーい!空雅!どした?そんな顔して」
いつの間にか演奏は終わってて呆然としていた
「え…あ…あの…言葉が出なくて…」
「この曲知ってんの?」
「うん。更紗が好きでよく弾いてた」
「そっか。これねぇ昔演奏したの。コンクールのときの曲でね。このときは俺は引っ越しててピアノ教室は変わってたんだけどたまたま会場で更紗に会ったんだよ。まぁ会話もしなかったけどね。その時のコンクールたまたま同じ選曲でさ更紗の演奏に飲まれちゃった。あいつ凄いんだもん。んであいつが賞とってさ。それが凄く悔しくてその後もかなり練習したんだよ。その後の俺の原動力になってる曲」
「そっか」
「空雅?大丈夫?」
「え?」
「もう…泣いてるじゃん!感動したの?俺カッコいい?惚れた?」
「見る目変わった」
「あはっ。それ喜んでいいやつ?」
「そうだね」
「よっし…あ…もうこんな時間か。飯食う?」
「僕作るよ」
「やった!んなら一緒に買い物いこ!」
「うん…あれ?」
「え?」
「…おっかしいなぁ…立てないや」
「はぁ?ったく俺の演奏で腰砕けたん?やーらし」
「五月蠅い」
「んもーしかたないなぁ!よいしょっと」
「うわわっ!ちょ…紫水!」
「あーぶーなーいー!じっとしてなきゃ落としちゃうよ」
急に横抱きにされたから驚いて紫水の首に巻き付く
「すこし休憩してからいこっか」
「うん」
リビングのソファーに下ろされて頭を撫でられる。
「くすぐったい」
「なんか今日可愛いねぇ」
「紫水もなんだか違うねぇ」
「なぁにそれ」
「何でもない」
「カフェオレ冷めちゃったね。入れ直す」
「ありがと」
そして二人で飲み物を飲んでしばらくして動けるようになったから買い物に出掛けた
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