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空雅の場合/47
「何作ってくれんの?」
「ん?紫水ハンバーグ好きだったでしょ?だからハンバーグかな」
「やーったぁー」
子供みたいに喜ぶ紫水に笑みがこぼれた。本当に…今日どうしちゃったんだろ?いつもの飄々とした紫水はどこだ?
「あれ?…」
スーパーから出ると見覚えのあるシルエット
「あー!あれってさ今人気の子じゃん!」
「萌葱…」
胸がきゅーっと痛くなる
「撮影?かな?でも一人だねぇ」
萌葱はどこかぼんやりと遠くを見つめていた。どうしたのかな?
僕たちの視線に気付いたのかこちらを振り返った
「あれ?空雅?」
「お久しぶりです」
「え?何かよそよそしくない?…あ…彼氏さん?」
「違いますよ。お仕事ですか?」
「うん。仕事帰り」
「お疲れ様です。じゃあ」
「あ!ちょっと待って」
「え?」
「はいこれ!お土産!彼氏さん?と一緒にどうぞ。じゃあまたね!」
「ちょっ…」
萌葱は走り去っていった
「空雅?知り合いだったの?」
「あぁ…ちょっとね」
店の外で会っても知らぬ振りをするのがこの業界のルール。多分遊びなれていない萌葱は何も知らなかったのだろう。
「知り合いなら一緒にご飯誘えば良かったのに」
「だめ」
「空雅?どした?…帰ろっか」
「うん」
紫水に肩を抱かれ帰宅する。近所だったので歩きだ
「空ちゃん!」
「空雅…お前知り合い多すぎ…」
今度は誰?…
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