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空雅の場合/53
萌葱side
あの日…空雅を初めて抱いた日…
胸の中に得たいの知れない何かが這い上がってきた…
仕事とはいえ可愛く啼いてくれる空雅が堪らなく綺麗で…誰にも渡したくないって…他の人に抱かれているなんて…考えただけで虫酸が走る…
「勝手だよね…」
俺の中には緋色がいる…それは紛うことなき事実なのに…
先輩に初めて空雅を写真で見せてもらったとき無性に会いたくて絶対に使うまいと思っていた店を利用した。
想像以上に可愛くて艶があって…小柄なのに芯が強そうで…
ごっそり何かが持っていかれた気がした
空雅は同い年ということもありとても話しやすくて高校時代最後に友人と遊ぶことが叶わなかった俺にとってはとても有意義な時間だった、
あの時代のやつに出会って動揺した俺を宥めてくれた。
俺のために怒ってくれた…すごく嬉しかった…
優しい緋色とだぶった…結局空雅を通して緋色を見てる…
俺…最低なやつ…だけどあの店に居続けることは空雅にとってきっとプラスにはならないはず。
だったら身請けして俺の側においておきたい…緋色の代わりに側にいてくれないかな?
緋色の代わりなんて本当に最低だ…
でも…今日久しぶりに見た空雅をみて悩んでたのが嘘みたいに消し飛んだ。
隣にいる彼氏だか友人だか関係性はわからないけれど男と仲睦まじく並んでいる姿をみて堪らなくなった。
俺だって空雅と親しい関係なんだって示したくて他の人に買ってきていた土産を渡した。
空雅のは実は別で用意していたけど手元にはなかったから
その足でそのままあの店へ出向き身請けの話をした。オーナーさんは驚いて…でも凄く複雑そうな顔をしてた。
他にも話がきているのか?だったら急がないと…
幸い稼いだ金は使い道もないので無駄に貯まってて空雅の身請け金はどうにでもできた
でも空雅は今日は休み。次の出勤時に話を通してくれるとのことだった。
「空雅…俺を選んで…」
身勝手な俺の思いには気付かないで…俺だけのものになって
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