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空雅の場合/71

八尋side ついて行った先は個室のある和食屋さん。何度か仕事の接待で利用したことがある 各部屋へ続く廊下は透明になっててその下を錦鯉がゆらゆらと優雅に泳いでいる 通された部屋は1番奥の部屋 2人で向かい合わせに座る。 ひとまず食事を終えて話を始めた 「失恋記念すね」 「言わないでよ…結構辛いんだから」 しーくんだってそうでしょ?…どんな思いでそんな風に笑ってるの? 今俺としーくんは同じ傷を抱えてるはず。好きだけど空ちゃんの事を離したくなくて気持ちを隠して一緒に過ごしていたのだから… 結局空ちゃんとの最後は空ちゃんが絶対に要らないと言ってた特別な人出来たからって理由なんて俺たちは何のために頑張って隠していたんだろうね…?苦しいね… 「ねぇ。やっちゃんさん。あのころは…充のことで…ごめんね…俺さ後悔したんだよねあの言葉言った後。1番辛いのはやっちゃんさんだったのにね…ごめん…」 こういうところ…変わってない…あの頃も自分が悪かったんだって思ったら時間たっても謝ってくれてたね。 「大丈夫だよ…俺こそ…充守れなくてごめんね…」 しーくんの方が俺よりずっとずっと苦しそうにしてる… 「…充はすごく幸せだったと思うよ…あいつ…やっちゃんさんの話するときいつも笑ってた…嫉妬しちゃってたけど…充が選んだ人だなって…だから間違いないんだって認めてた…」 あぁ…しーくん…君は変わっていないね…すごく優しい子。 「充のことがあったのに…他の人に気持ち移っちゃって…充怒ってるかな」 ずっと感じていた罪悪感もするっと溢れてた。それにしーくんは即答してくれた 「それはないでしょ。充はきっと喜んでたと思うよ」 その言葉で救われたって…思えた…本当…君は強い子だね… 「でも…まさかまた…同じ人を好きになっちゃうなんてね。好みが似てるんだね俺たち」 「あははっ…そうなんだろうね…空ちゃん…幸せになれるといいな…」 「相手知ってる?」 「ううん…知らない…プライバシーの保護しないとだし話しちゃダメっしょ」 「俺ね偶然相手知っちゃったんだよね」 「そっか…」 誰か知ったところでどうしようもない 「今話題の俳優…木築萌葱…」 「あの?」 まさかの人が出てきて息を飲んだ 「うん。モデルしてたすっごく綺麗な実力派俳優」 「そうなんだね、よかったね、俺の会社前に彼を使わせてもらったことがあって何度かあったこともあるんだけどすごく真面目でいい子だった。よかった…変な人じゃなくて…」 相手を聞いてすごく安心したのと同時に彼に敵うわけないって思ったし彼なら空ちゃんを夢中にさせられる器量を持ち合わせているとも思った。頑なな空ちゃんを溶かしてくれたことにすごく…何だかおかしいけれど…感謝した 彼で良かった…本当に…

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