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空雅の場合/74
「智輝。珍しいねこの時間いるの」
「空雅こそ。久しぶり。俺は今日これから会議でそのまま会食入ってるから」
「相変わらず忙しいね」
「おかげさまでね。空雅。何かあった?」
「うん。恋人ができた」
「恋人?良かった…ね…?でも…なんか苦しそうだよ。相手は?八尋さん?」
智輝の言葉になぜが胸が痛んだ。智輝が何を思ってそんなことをいったのかはわからないけれど…
「はぁ?何言ってるの?そんなわけないでしょ。」
焦って否定したら本当に不思議そうに智輝が問うた
「え?何で?違うの?」
「違うよ。多分智輝も知ってる人。けど相手に確認しないと誰かは言えないな」
「…それでいいの?その人でいいの?」
どうしてそんなこと言うの?萌葱のこと知らないくせに…少しイラっとして思ったより低い声が出た
「何言ってるの。当たり前でしょ。好きだから付き合ったんだし」
「そう。…」
まだ何か言いたげの智輝の言葉に被せるように言葉を紡いだ
「ミッチーはどう?」
「見ての通りだよ。体調は安定してるけど…」
うまく気を逸らすことができて安堵した。でもどうして安堵するのか?最近は自分の思いが自分のことなのに全く見えてこない…あんまりかんがえたくなくてわざと明るくミッチーに問いかけた。綺麗な寝顔で横たわるミッチー。ミッチー…ねぇ…いつ起きるの?
「ミッチー。まだ寝てるのぉ?智輝誰かに取られちゃうよぉ」
「それはない」
「そうですか」
智輝のいかにも心外だと言う顔に苦笑する。わかってるよ。智輝がほかに囚われることはないということくらい
しばらくそこでともきと話して病室を後にした
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