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空雅の場合/78

迷い?初めてあった人に気付かれるなんて…思ってなかった 「迷い?ですか?」 「…萌葱悪いけど席外してくれない?少し空雅君と二人で話したい」 「何言ってんの?」 「萌葱。いいよね」 萌葱が言葉を飲み込んだ。お母さんには何故か逆らえない空気があった 「萌葱。おいで」 お父さんに促されて席をたち離れていくのを確認してこちらに向き直った 「ごめんね。俺今から凄く嫌なこと言うかもしんない」 「いえ。大丈夫です」 「ねぇ。空雅君。君は本当に萌葱が好き?」 何を言っているんだろう?そんなの当然なのに 「えぇ。好きです」 「…」 色素の薄い瞳に吸い込まれそうなくらい胸が高鳴った 「…じゃあ…萌葱に本当に愛されてるって確信できる?」 「…はい」 …そう思ってる…でも…やっぱり…緋色さんを思う気持ちには敵わないと… 「…ごめんね。泣かせちゃった…」 そっと手を伸ばして頬に触れられた。涙が溢れてたんだ…触れられたところが熱くなってもう止めることはできなかった 「俺ね凄く勝手なんだけど…出会ったからにはみんなに幸せになって欲しいんだ…家族はもちろんその回りの人にもね。萌葱の事で何か悩んでるんでしょ?」 これまで誰にも話せなかった事だったのにスルスルと言葉が流れた。お母さんは不思議な力がある… 「…寝言で…まだ緋色さんを…呼ぶことがあるんです…僕を抱くときも…時折辛そうな困ったような表情をしていたり…僕なりに…一緒にいたくて頑張ってきたんだけど…やっぱり…一番になれないことが苦しい…どうして緋色さんは何も言わずに言っちゃったんだろう…」 「…緋色はね…多分萌葱に幸せになって欲しくて何も言わずにいったんだと思うんだけど何も言わなかったことで萌葱の中に自分は居座り続けるって…思ったんじゃないかな?幸せになって欲しいけど自分のことを忘れてほしくないって…緋色と萌葱は良く似てるんだけど…中身が違う。緋色はうまく本音を隠せる子だけど誰よりも自分が愛されたいって…その想いが強いんだよね…」 緋色さんはずるい…こんなにも萌葱を傷つけたのに… 「…緋色ずるいよね」 「…」 無言でうなずく… 「ふふ…だよね。俺もそう思うよ。でもね…君もずるいよ?空雅くん」 「え?僕が?ずるい?どうして…?」 「…清澄 八尋さん…」 ここで…八尋さんが出てくるなんて… 「清澄さんは…。知ってる?彼…今凄く荒れちゃってるの…君に出会う前より酷いかも…」 「何で…」 「身に覚えがあるんじゃない?」

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