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空雅の場合/81

「僕は萌葱に身請けされた身です。自由に動き回ることはできない。」 「…萌葱が君を自由にしたとしても?」 「…それって…」 「俺ねすごーく最低なやつなの。おいで。空雅君」 促されるままついていく。さっきの席とは真逆の席に向かった。 「茜。お待たせ」 「話し終わった?」 「うん。」 「空雅…」 「萌葱…」 呼ばれた方には萌葱…そして萌葱と同じ顔をした… 「緋色…さん…」 「…はじめまして…空雅君…」 「萌葱どうするの?緋色の話し聞いてどうすることにした?」 「俺は…空雅と…」 「そう。だったら好きにすればいい。そんな顔のまま空雅くんに戻れるならね」 「何で…こんなこと…空雅に申し訳ないとか思わないの?」 「その言い方…萌葱にとって空雅君はそれだけの存在なんだね」 「…ちが…」 「同情で側にいるというのなら俺は許さない。萌葱の唯一が空雅君だって言い切れるのならば許せるけどね」 「…」 萌葱は口を継ぐんだ…それが答え…だ 「…緋色さん…」 「はい…」 本当に全く同じ顔。違うのは少しだけ柔らかい感じがする。多分普通に萌葱だって言われて黙って立ってたらわからないだろう。 「おかえりなさい」 「え?…」 緋色さんを初めて見た時の表情ですぐに理解した。緋色さんは今でも萌葱を思ってる。そして…萌葱も… だったら僕が出来ることは… 「やっと萌葱から解放されます。ありがとうございます」 「空雅?…」 「もう。萌葱気が付かなかったの?僕が演技してたの。プロなのに何やってんだか。僕は君に金で買われたから君の求める言葉や態度でわざわざ接していただけだったのに。肩の荷が下ります。ちなみに身請け金には全く手をつけていないからそのまま返すね。じゃあね」 「空雅!!」 萌葱に強い力で腕を捕まれた。正直嬉しい…引き留めようとしてくれているのが。でも…違うでしょ?萌葱… 「萌葱。離して。痛いから。」 離された温もりを目で追う。自分でもわざとらしいって思うくらい顔を顰めて腕を擦る。 「じゃあね。楽しかったよ。バイバイ。お父さんお母さん今日はありがとうございました。お食事美味しかったです。では」 萌葱は追いかけてこなかった… 店を出るとお母さんが着いてきてた。 「空雅君。これ。今の八尋さんの自宅。行ってあげて。体調崩しちゃってるから」 「いえ。僕は…」 断ろうとしたらお母さんが抱き締めてくれた。 「空雅くん。苦しめてごめん。辛い思いさせてごめん…萌葱のことありがとう…もういいんだよ…君は人を好きになっていいんだ…君はこれまで頑張ってきたんだから…」 お母さんから解放されると 「空雅くん。」 「緋色さん…。」 緋色さんが来ていた。萌葱じゃないことに落ち込むが…それも、仕方がない 「萌葱のことありがとう…本当に…ごめんね…俺の勝手で…君まで傷つけた…」 「…」 「俺…やっぱり諦められなかった…萌葱のこと」 「萌葱も…ずっとあなたのこと思ってましたよ。毎晩寝言であなたを呼んでた」 その言葉にお母さんも緋色さんも目を見開いた 「…だから…この日がくることわかってたんです。ごめんなさい。緋色さん。あなたの大切な萌葱をこの一年一人占めしちゃって…色々…」 「ううん…君がいてくれて良かった…」 「萌葱のこと大切にしてあげてくださいね。僕から言われるまでもないでしょうけど…じゃあ僕はこれで…」 今度こそ振り返らなかった。

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