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空雅の場合/82
家を残しておいて正解だった…久しぶりの我が家に急ぐ…
自宅マンションの駐車場に見覚えのある車が停まっていた
「空雅!!」
「…父さん…」
久方振りに見る父は多少痩せて疲れているようだった
「…何しに来たの?こんなところに。もうあなたの息子ではないのでしょう?」
「空雅…悪かった」
「え?…」
いつも威圧的で誰にも頭を垂れたことがない父が僕に向かって頭を下げ謝罪の言葉を口にした
「私はお前の心情をわかろうとしなかった…苦しいときに支えられなくてすまなかった」
驚きすぎて声も出ない…固まっていると助手席から母が降りてきた。母は僕を抱き締めた
「空雅…ごめんね…」
「何の茶番?跡取りのことで困りでもした?悪いけど僕はそこには戻らないよ。離してくれない?」
「空雅…」
「今さら何?帰って」
「…空雅」
母親はポロポロと涙を流す。でも今さらどうすればいいのかわからない…
「また…来る」
沈んだ声でそう発した父の目にも涙が浮かんでた…
もう…本当に…この人たちは…
「…来てくれてありがとう。でも僕はもうあの家に戻ることはない…ごめん。親不孝な息子でごめんね。体気を付けてね」
「空雅…」
「何?その顔…らしくないよ。父さん。母さんのことよろしくね。たまには連絡するから…じゃあね。ほら。仕事戻らないと。ね?」
渋々立ち去る二人を見送る。部屋に入るとどっと疲れがやって来た…
何か…もう…疲れた…
目を閉じ思い浮かんだのはあの人の笑顔だった。
そのまま気付けば意識を手放していた
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