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空雅の場合/85
浅い眠りから目覚めると外は夜中になっていた。
夢の中でも萌葱のお母さんが出てきて八尋さんのことを話してた…
得たいの知れない不安に駈られて本当は連絡なんてする気はなかったけど八尋さんの番号をタップしてた
数コール鳴るけれどなかなか出ない…さっきの感じは気のせいだと自分に言い聞かせて切ろうとしたとき声が聞こえた…
『はい…』
久しぶりに聞こえた優しい声は疲れているようだった。
その声に胸が締め付けられた…本当に…おかしくなっちゃったのかな…
『八尋さん』
呼び掛けるけれど返事が返ってこない…もしかしてわからない?僕の連絡先消しちゃった?すごく悲しくなった
『八尋さん?空雅です』
『空ちゃん…』
『お久しぶりです。お元気ですか?』
『…空ちゃん…どうして…』
考える間もなく言葉を発してた
『八尋さん。会いに行ってもいいですか?』
八尋さんが息を飲んだのがわかった…
『だめですか?…』
『…ごめん…今日は無理かも…俺引っ越したんだ。』
『えぇ。知っています。教えてもらいました』
『え?誰に?…』
『木築 さなえさん…僕が一緒に暮らしていた萌葱の母親です…』
『…っ…』
『会いたい…八尋さん…』
『…俺がそっちいく…前の家かな?』
『はい…』
『わかった…待ってて』
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