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空雅の場合/91
電話を切ったあと二人で抱き合い眠った。
体を繋げないで眠れた。八尋さんと行為をしないことは初めてだったけど凄く安心できて…
夢もみないほど深く眠った。これは僕にとっては大きな変化だった…
翌朝。やはり顔の腫れが引かなかった八尋さん。
それでも会社に向かったのだけれどあまりにも酷いので強制的に病院にいかされたみたい。会社を出るときに僕に連絡をくれたから僕も向かった。
そこはミッチーのいるあの病院だったし八尋さんに早く会いたくて仕方なかったから。
「八尋さん!」
「あれぇ?くうちゃん?どしたの?」
「八尋さんに会いたくて来ちゃった。これから診察?」
「うん。そだよぉ。」
「じゃあ僕ミッチーに会ってくる!終わったら迎えに来てくれる?」
「りょーかーい」
ひらひらと手を降り見送ってくれた八尋さんに背を向け病室へ向かう。その途中…
「空雅!」
「智。おはよぉ」
智輝の表情があからさまに明るくなった
「よかった!これから連絡しようとしてたんだ」
「なぁに?どしたの?」
「路夏がね。目覚めたんだよ。まだ起き上がれないしあんまり話せないけど目を覚ましたんだ!!」
「そうなの!?」
気付けばボロボロと涙がこぼれ落ちてた。
あんなに嫌いだったのに今はこんなにもうれしい
「今ね路夏のご家族がきてるの」
「え?じゃあ。邪魔しない方がいいねぇ。僕は帰ろうかな?」
「ううん!来て!きっとご家族喜んでくれるよ!」
興奮気味に話す智輝。初めて見るその姿にびっくりして溢れてた涙も止まっちゃって
「ふふ…あははっ!!よかった!よかったよぉ!!」
病室へいくと凄く上品で洗練された感じの人たちがいた
「こんにちは。空雅です」
「あら。あなたが?智輝くんに聞いていたわ!路夏によく会いに来てくれていたのでしょう?」
花のように笑う可愛らしい女性。
「あら!ごめんなさい。私路夏の母です。こっちが紡と優芽」
「「こんにちはー!!」わぁ!!お兄ちゃんのお友達王子様ばかりなのねぇ!」
横たわる路夏に語り掛ける彼女。
「空雅くん。こちらにきて、路夏とお話ししてくれないかしら?私たちこれからお買い物にいかないとならなくて」
「はい、」
「じゃあよろしくね」
ご家族を見送ってゆっくりと近づく。
「みっちーおはよぉ」
『くうが』
まだうまく言葉が出ないみたい。でもちゃんと聞こえた気がしたよ
「みっちー!待たせ過ぎだよぉ。智のこと。」
みっちーは申し訳なさそうに笑った
「ねぇ。みっちー!あのときはごめんね」
ゆっくりと首を降りあまりうまく動かない腕を伸ばそうとしてくれたからそっと手をとった
『くうが…ありがとう…』
「っ…もう!!らしくないなぁ!みっちーは僕のこと嫌悪してなきゃ」
『なんで?』
「ふふ…よかった。そのまんまみっちーだね。早く君とお話ししたいな。だから無理して元気になって。いい?」
ゆっくりと頷くみっちーの腕を布団の中に戻す
ノックする音が聞こえた。
「はい」
智輝がドアを開けると八尋さんがいてその顔をみた智輝がびっくりしてた
「清澄さん!!どうしたの?それ」
「あはは…ちょっとやらかしちゃって…」
「みっちー。君にもう一度ちゃんと紹介するね。今日は…まぁ傷だらけだけど…普段は男前なんだよ。八尋さんきて」
「…初めまして、路夏くん。清澄 八尋です」
不思議そうに八尋さんを見つめるみっちー
「僕のねパートナーだよ!」
そういい八尋さんの腕に巻き付く
そしたらみっちーが目を見開いてにこっとしてくれた
『くうがのことよろしくおねがいします』
「うん。任せて!」
八尋さんのはっきりした言葉に破顔したみっちー。やっぱりみっちーは笑顔が似合う。高校時代はあまり見られなかった笑顔。でもこんなにも回りの人をぽかぽかにしてくれる魔法みたいな笑顔。
だから…あの当時怖かったんだよね。みっちーだけを智輝が選ぶんじゃないかって。そうしてらやっぱりそうで。でもみっちーだから。智輝は選んだ。今ならよくわかるよ。
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