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空雅の場合/その後2

数日前に紫水にたまたま出くわした。 萌葱と離れることになった話はしていたのだけれど八尋さんのことは話してなかった。 「空雅!?久しぶり!!」 「紫水!」 久しぶりに会えたから場所も弁えず抱きついてしまった。 そこにたまたま八尋さんが通り掛かったのだ 「空ちゃん…」 「あ!!八尋さん!!」 パタパタと走って八尋さんの胸に飛び込むと痛いくらい強く抱き締められた 「ちょ…痛い…八尋さん…」 初めてのことに不安になって顔をあげるとキスされた。それも深い深いキス。ここは街中で周りには沢山人がいるのに! 「やひっ…んん…あっ…」 「エッロイ顔…」 「八尋さん?どうしちゃったの?」 「…俺以外の人と…抱き合ってた…」 「やっちゃんさん!お久しぶりです」 「しーくん…」 「やだなぁ…嫉妬ですか?ただのセフレなのに?」 紫水の挑発的な言い方に八尋さんは紫水を鋭く睨んだ 何だか不穏な感じがしたので八尋さんにキスをお返しする 「八尋さん」 頬に手をあてながら見つめる 「紫水とはなにもないよ。今もたまたま会っただけなんだよ。紫水。突然ごめんね」 「ううん。」 「あのね。僕今八尋さんとお付き合いしてるの」 「は?え?あ?んー…あぁ…そっか!そうなんだね!りょーかーい。やっちゃんさん!安心して。空雅と会ったの空雅が木築萌葱と付き合い始めて以来初だから!本当に今日はたまたまだよ。そだ!これから一緒にお茶しません?」 紫水に言われるままついていった先のあのお気に入りのカフェ。 これまでの経緯を色々話して紫水を見ると苦しそうだった 「どしたの?」 「いや…え…と…やっちゃんさん。すこーしだけすこーしだけ空雅貸して!」 「はぁ!!??」 「変なことはしねぇから!ね!お願い…」 そして八尋さんにしか聞こえないように何か耳打ちすると八尋さんは不安に瞳を揺らす。でもしっかり紫水の目をみて伝える 「わかった。俺会社に電話してくるから」 席を離れたのを確認して座り直した僕たちは見つめあった。 紫水には沢山気にかけてもらった。いつもの軽薄な態度にたくさんたくさん助けられた 「空雅。俺とやっちゃんさんのこときいてる?あと充のことも」 聞いてた。紫水は八尋さんが愛した充さんの幼馴染み。そして…紫水が唯一愛した相手もまた充さんだったって。 紫水と体を重ねたときに聞いたことがあった。 「俺絶対本気にはならない。好きな人がいる。忘れられないんだ…もう…手は届かないところにいる」 「えぇ?らしくない。強引さでものにしちゃえばいいのに。紫水普通にしてたら男前だしお金持ちだしすぐ落ちるよぉ!」 あのときは紫水は曖昧に笑ってたけど…今思えば途轍もなく重い爆弾だったんだ…だって…もうその人…充さんはこの世にはいないのだから。それを思うとあのときの僕を殴ってやりたい 「俺もねやっと好きな人見つけられてたの」 「えぇ!よかったねぇ!おめでとう」 「…相手はお前だよ。空雅…」 「え!?…なんの冗談?」 本当はわかってる…それが冗談じゃないことくらい…だって紫水の目は真剣そのものだったから 「やっぱ…やっちゃんさんには敵わないな…あーもう!!木築に捨てられて落ち込んだとこに漬け込もうって思ってたのになぁ!もう!立つ瀬なしじゃん!」 「…ごめん…」 僕が紫水と同じ立場ならおそらく耐えられない…二度も同じ相手に好きな人を奪われているのだから…でもごめん…僕は…八尋さんがいいんだ 「謝んなよ。大丈夫!知ってるだろ?俺の切り替えの早さ」 「…」 「んな顔すんな!」 わしゃわしゃと犬でも撫でるかのように僕の髪を乱す紫水に好きなようにさせた。 僕はなにもしてあげられない 「なぁ空雅…」 「うん」 「お前は今幸せ?」 「うん、幸せ」 「ふふ…良かった…空雅…お前のお陰で俺もね変われたよ。いい加減なこともうやめたんだ。だから…安心して?」 また荒れてしまうんじゃないかって心配したのが顔に出ていたのだろう… 「…空雅。ありがとう!元気でね!」 そういうと紫水は僕の顎を長い指で救い上げ触れるだけのキスをした 「あぁ!!しーくん!!」 「へへっ!」 「変なことしないって言ったでしょ!!」 「してねぇし!ねぇ!空雅」 子供みたいに言い合う2人をハラハラしながら見つめる。 「やっちゃんさん。これだけは言わせて。今度は必ず守って。絶対手を離したりしないで」 「わかってる」 「うん!ならまたねぇ!お二人さん。今度はゆっくり飲もうねぇ」 ヒラヒラ手を降る紫水を見送った 「八尋さん」 「ん?」 「紫水にも見つかるといいね。」 「そうだね」 そっと手を繋ぎ紫水の姿が見えなくなるまでそうしてた… そんなことがあったからかすごく不安みたい 本当に…信用ないなぁ…僕…でも大人な八尋さんが嫉妬を隠さなくなったのが嬉しい。ただのセフレだったときは嫉妬してたって言ってたけど全くもって大人な対応でわからなかったし。 思いの外独占欲が強いのもすごくうれしい。 紫水side 柔らかい表情の空雅に安堵した。やっぱり俺は選ばれなかったけれどそれでもいいと思えた。好きだからこそ見守っていたいんだ 「社長!しゃーちょー」 「んん?なぁに。」 「僕じゃダメですか?」 「は?」 「今日空雅さんといたでしょ」 「は?」 「僕頑張りますね!んじゃ!覚悟しててください」 最近俺の秘書になったこいつ。多分空雅のことを知っているらしい。 仕事も出来るし見た目もいい。少しだけ空雅に雰囲気の似てる相手。面白いやつだな… こいつと関係が変わるのはもう少し先…

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