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深雪の場合/13
ゆうの家は会社の持ち物らしい。大きな会社だからなのか一軒家が与えられるそうだ
庭は僕が三徳さんと住んでいたところより狭いけれどそれなりに整えてあった。
でもゆうはお花の世話は苦手みたいで所々枯れてしまっているのがあって完璧に見えるゆうのそんな一面にはびっくりした
「ゆー」
「ん?なぁに?どしたの?」
「新しいお花植えたい…だめかな?」
「いいよ。庭とか家とか勝手にしていいみたいだし」
「お花屋に連れてって」
すごく勇気のいるお願い。三徳さんとさよならして外に出るのが怖くなっちゃって一度もお願いしたことない。また僕と出会ってしまった誰かを不幸にすることが怖い
「いいよ!これから行ってみる?」
「うん…がんばる…ゆう…手…繋いでいてくれる?」
「勿論。辛くなったらすぐ教えて?」
こうして久しぶりに出掛けた。お店はすぐ近くにある。可愛い小さなお花屋さん
ドキドキドキドキ苦しくなってくる…でもそれに気づいたゆうが手をぎゅって握ってくれ背中を支えてくれる
「いらっしゃい。あっ!天使みたい!!」
店番をしていたおそらく結構若い男の子?がにっこり笑う
「…っ…ゆ…ゆう…はぁ…」
「え?すいません!!僕何か失礼なこと…」
「大丈夫。ごめんね。また来るね」
「ゆー…ダイジョブ…大丈夫だから…あの…え…と…お庭でお花を育てたいのだけれどおすすめは…ありますか?」
「お二人はご夫夫?」
「そう見える?ふふ…嬉しいなぁ。でもねぇ俺の片想いなの」
「そうなの?日本人だよね?の割には背も高いしお兄さん格好いいからびっくり」
「ゆー…」
「ね?深雪」
「深雪…ふふ…綺麗な名前だね。僕の叔母がね日本の人なの。叔母も同じ名前だよ。漢字あるんでしょ?僕の叔母は美しい幸せって書いてみゆきなんだ。お兄さんは?」
「えと…え…」
「深雪はね。雪が降る寒い日に生まれたの。その雪がとても綺麗だったからって雪って漢字使ったみたいだよ。とても静かな真っ白で幻想的な深夜の誕生だったからそこから深雪になったんだって」
「何で知ってるの?」
「…秘密」
「ゆーばっか僕の事たくさん知ってる…」
「深雪も沢山聞いてくれればいいよぉ!何でも教えちゃう!」
「ふふ…本当に片想いなの?相思相愛に見えるよ?」
「へへ!そうなるように俺頑張っちゃう」
ゆうのこの明るさは今の僕の救いだ
「庭の花だよね。だったら…ビオラやパンジーがおすすめだよ。育てやすいし叔母が教えてくれた花言葉がとても君たちにピッタリだから」
「花言葉?」
「うん。気になったら調べてみて。この子達なら色も沢山あるから楽しいと思うし庭が明るくなるよ」
進められたものを買い早速庭に植えた。
「可愛いね。昔からよく見るお花だけどやっぱり可愛い」
花屋を出る頃には始めに感じた恐怖は無くなってた。とても不思議な魅力のある子だった。自分でも久しぶりに笑えたと思う
「…ふふ…貴方たちの思いが交わりますように…」
優しい眼差しで僕たちを見守る彼の願い。その言葉は優しい風に浚われて僕らには聞こえなかった
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