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深雪の場合/27
ゆうから予め彼をつれてくるのは聞いていた。
彼からちゃんと話をしてくれるみたいだった。
ゆうの胸に飛び込んで少しして体を離して彼を見つめる
「ノア。初めまして。深雪だよ」
「あの…ごめんなさい!」
「え…っと…うん。許さないけど」
「…っ。そうだよね…ごめんなさい!俺帰っ…」
「まーって!待ってノア」
「っ…」
「取り敢えず入って。座って。落ち着いて。ね?」
そしてノアの話を聞いた。理解しがたいところも沢山あったけど見えたのはどうすればいいのかわからなかっただけなんだっていうことと、きっとこれまでとっても辛い思いをしてきたから現実逃避して今の感じになっちゃったってこと。それに関しては治療がいるかもしれないね。それと由斗の存在が救いになったってこと。
何だ…僕と同じで少し状況が違っただけなんだ…そう思うと変に仲間意識も芽生える。きっと根は悪い子じゃない。やり方がわからなかっただけ。
「話しはわかったよ。良かった。君が戻ってこれて。このまま夢の住人になっちゃったら大変だったね」
「俺…ごめんなさい…」
ノアは俺たちより四つ下の子らしい。家族はなくこれまで貧民街で一人で生きてきたそうだ。
僕らにしてきたこと、由斗への思いをちゃんと聞いた。
小さい頃から死に物狂いで生き抜いてきてそして今ちゃんと仕事をして全うに生きようとしてる。
そんな人だもん。悪い人のはずはない。ただ寂しかっただけ。コンプレックスだと言っている容姿についてはたしかにお世辞にも綺麗だとは言える感じでもないけれどかといって見られないほどでもない。…ていうか…これは…
「ねぇねぇ。ノア。」
「はぃ…」
「んとねぇ…許して欲しかったら僕の言うことに従って。取り敢えずここ。座って」
言われるまま不安そうに腰かける。引き出しからハサミを持ってきたら彼は目を閉じた…
「どうにでもしてください」
「うん。そうさせてもらうね。よいしょっと。大人しくしてて。動かないで」
僕の行動をゆうはにこにこしながら見てた。
「…」
泣きそうな顔をしてうつ向く姿は可愛いものだ
「よっし!いいよぉ。うん!こっちのがいい!」
彼の髪を整えてあげた。目にかかってたボサボサの髪は顔が見えるくらいまで切って絡まってた髪もきれいにした。つやつやしてて綺麗な髪だ。
「うん。可愛い!目開けていいよ」
「え…?あの…俺のことハサミで痛め付けるんじゃなくて?」
「えぇ!!そんなことしないよぉ。痛いの嫌だし。これが僕からのお仕置き。それとぉ…」
今度はクローゼットにいって僕の服を出す。
「これ。これに着替えてきて。早く」
「え?…え?」
「はーやーくー」
「はい…っ…」
奥の部屋に姿を消したノア。
「みーゆちゃん。やるじゃん。さすが」
「へへっ。髪とか触るのは昔から自分でしてたから得意なんだぁ」
「にしても…ノアって」
「うん。あの子…」
「あの…着替えました…」
「おいでぇ」
おずおずと出てきた彼の姿に思わず笑みが溢れる
「かぁわいい!!!ノアちゃんスッゴク可愛い」
そう。彼はダイヤの原石だったのだ。
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