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深雪の場合/34
小さく震える僕を叔父から隠すようにゆうが後ろに下がらせてくれた
「…高輪さん」
「…君は…有坂さんの…」
「深雪に何の用です?」
ゆうが詰め寄る。その姿を小さく震えて見ていることしかできない
「深雪…すまなかった…」
え?叔父が深く深く頭を垂れ謝罪の言葉を口にした。思ってもいなかったことにゆうも僕も何も反応できない
「お前をルイの代わりにしていた…ルイとは向こうに住んでいた頃に付き合っていたんだ。でも俺たちは無理矢理に引き剥がされ結婚させられた…そこに来たのがお前で…成長していくにつれどんどん似ていくお前を見て押さえられなかった…ごめん…」
「…」
「こんばんは。深雪」
叔父の姿に気をとられていたので気が付かなかったが後方から声が聞こえた
「深雪…ごめんね…マユが散々ひどい目に遭わせていたこと聞いた…ごめん…俺がもっと強ければ…マユを奪っていたら…君やマユの奥さんを傷つけることなんて無かった…本当にごめん」
「…」
「ルイと一緒に過ごし始めて自分の愚かさを呪った…謝っても謝っても足りない…」
「…叔父さん」
「…」
叔父は苦しそうに顔をあげた
「叔父さん…三徳さんが亡くなったのはご存知ですか?」
「あぁ…聞いたよ…共通の知人も多くいたから…だからお前を探していたんだ…お前が一人になってしまったのだと思ったから…ルイもお前と一緒に暮らしたいと言ってくれた…帰国したと聞いて探し回ったよ…」
「ルイさんがどうして?」
「…君の母親は俺の双子の姉なんだ…」
初めて知る事実と恐ろしく似ている真相を初めて知って驚く
「母さんの…弟さん…」
話には聞いてた…弟がいるって。でも突如行方不明になって散々探したけど見つからなくて途方にくれていたとき叔父の兄である僕の父に救われて恋に落ちてそして僕が生まれた…そう聞いてた。
「うん。姉さんはまさに天使そのものだった。とても慈悲深い人だった。姉は俺の自慢だったんだ。俺はマユと無理矢理引き剥がされたすぐ後から閉じ込められてた。それから俺はその人たちの玩具になってた…もう2度とマユの前に現れることができないようマユの両親が裏でうごいていたようだ。姉の葬儀にも出させてもらえなかった…地獄みたいな場所から救いだしてくれたのは三徳さんだった…深雪が大変な目に遭っている…俺と同じような目に俺の愛した人の手によって…そう聞いてとても苦しかった…」
「ルイさん…」
「ごめんね…深雪…苦しめて…だから…償わせてほしい…君と過ごしていきたい…」
「…ルイさん…ごめんなさい。せっかくのお申し出ですが…僕は…由斗と共に生きていきたいのです、由斗と離れたくないのです…だから…ごめんなさい」
「深雪…」
「叔父さん。ルイさんとお幸せに…」
「深雪!あの…また会いに来ても良い?俺の知らない姉の話沢山聞きたいんだ…」
「えぇ。今度お食事でも」
「ありがと…」
「叔父さん。これまでありがとうございました」
「え…」
「叔父さんが三徳さんと出会わせてくれたから今があるから。あなたと過ごした日々はまさに地獄でした…それは変わらない事実ですし僕はあなたを許せない。でもそれがなければこうして由斗を思うことなんて出来なかったことも事実ですから。もう間違えないでください。僕からのお願いです」
「…深雪…今幸せか?」
「勿論です。じゃあ…行きますね。探していただいてありがとうございました。ルイさん。またお会いしましょうね。あ…ルイさん。あの…これ…僕の連絡先です。レシート裏ですいません」
ルイさんに渡すとルイさんは涙ぐんでいた
「僕の知らない母の話し沢山聞かせてください。ゆう。行こう」
「うん」
ゆうの手を引いてその場を立ち去った
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