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第4話 初めての春

 ナージャは、夢を見ていた。眩しい後光を冠したアレンが、裸身で自分に屈み込んでくる夢を。 (アレン……迎えに来てくれたのか……お前、綺麗だな……)  竜は元々、雌の比率が少ない。その為、繁殖期には雄同士で性行為を行う事も少なくなかった。ナージャは、アレンの裸身を見て、初めて自分の中で欲望が頭をもたげている事を意識した。 (アレン……)  腕を伸ばそうとしたが、ピクリとも身体は動かなかった。だがアレンが添って横になると、体温がじかに伝わってきて、温まると共に欲望が高まった。 (俺……お前が好きだアレン……) (俺も、好きだよ……ずっと……)  触れ合った身体から、想いが溢れるように伝わる。奇妙にも、二人とも天上に召されたというのに、ナージャは満ち足りて幸福というものを強く感じていた。  動くようになった腕をアレンの首に回して唇を触れ合わせると、アレンは仄かに頬を紅に染めた。 (ナージャ……) (アレン……お前を抱きてぇ……その罪で地獄に堕ちたって構わねぇ)  人間にしかない器官、鎖骨が、竜であるナージャにはひどく扇情的に見えて、彼はそこに甘く糸切り歯を立てた。 「ぁん……っ」  思いがけずはっきりと喘ぎが上がり、ナージャはもう我慢が利かなくなった。アレンの下肢に手を伸ばし、まだ体温の上がりきらぬナージャには火傷しそうなほど熱く感じられるアレンの花芯を握る。意外にも、そこはすでに形を成していた。 「アレン……イイか?」  囁きながら上下に扱くと、アレンは涙混じりの嬌声を上げてナージャの項にしがみ付いてきた。返事は返ってこなかったが、その動きが言外にこれから行われる行為を許容していた。  並んで横になっている為、ナージャは片手でアレンの片膝を持ち上げ脚を開かせて、もう片手でアレンの先走りでぬめる指を、薄い茂みに秘められた奥の蕾に埋めていく。 「あ、ナ、ジャ……変に、なりそう……」 「なって良いんだぜ。それが交尾だ」  まだ経験した事はなかったが、ナージャは知っていた。雄同士の性行為の方法を。アレンのナカをかき回し、腹側にある筈の部分を探す。 「ア……! そこ、駄目ぇっ……!」  探していた内部のしこりに触れた途端、堪らないようにアレンが腰を跳ねさせた。口では拒絶しながらも、自然に前後に腰が動いてしまうのを止められないようだ。ナージャは、アレンが涙を見せるまで、そこにたっぷり愛撫を施した。アレンがしゃくり上げる。 「ナージャ……! もうっ……出ちゃう……っ」  天使のようなアレンの顔にはやや不似合いな、色を含んだ言葉が上がり、ナージャは問わずにいられなかった。 「『出ちゃう』……? って事は、アレン、お前……誰かとした事あんのか……?」  人間は竜と違って、一定の年齢に達すれば、一年中発情期なのだと教わった。俺以外の誰と。思わずそんな嫉妬心が芽生え、ナージャは指を引き抜いた。 「ヒッ……!」  アレンがその衝撃と喪失感に、小さな悲鳴を上げる。ナージャはすでに猛り狂っている雄を、アレンの桃色に色付いた蕾に押し当て、少し入れては抜いてしまった。 「あ、やっ……」  待ち望んだ快感が訪れない事に、アレンは焦れてまた腰を振っていた。 「ナージャ……!」 「言えよ。誰とした? 色んな奴としたのか? 人間か?」  矢継ぎ早に口から出てしまう苛立ちは、無意識のものだった。『人間は一年中、発情期』と教わった時は、驚きこそしたものの、こんなに心が動くとは思わなかった。アレンが息も絶え絶えに答える。 「誰とも……してない……っ。自分で……ナージャが、まだ発情期じゃないから……」 「……っ」  その言葉は思いがけないもので、油断していたナージャは達してしまいそうになり、下腹に力を込めた。初めての発情期を迎えたナージャは、知識こそあるものの、まだ若い欲望に身を焦がしているのだった。 「そりゃ……俺が好きだったから、か?」 「うん。ナージャが他の人や竜を選んだら、一生言わない、つもりだったけど……」 「アレン……俺が愛してるのは、お前だけだ」 「俺、もっ! あっ、あ、はぁん……っ!」  (みな)まで言わせず、ナージャはアレンに押し入った。アレンの内部は熱くてキツくてしっとりと絡みついてきて、ナージャは四~五回腰を使うと、途端に暴発した。  だがナージャ自身は萎える事を知らず、抜かずに何回も絶頂を極めては腰を乱暴にアレンの尻に叩きつける。まだ相手を思いやる余裕のない自分本位の性行為は、アレンを千々に乱れさせた。イキたくてもイケない甘い責め苦に、アレンは嗚咽してナージャに訴えた。 「ナッ……ナー、ジャっ、イキたい……っ!!」  完全に理性を失っていたナージャは、荒い息をつきながら、アレンの身体を深く折らせてふと瞳に愛しさを募らせ彼に口付けた。 「ああ……悪りぃアレン……今度は、一緒に、イこうぜ……。イイだろ?」 「は、ぁあん、イイっ……イく……っ!!」  ナージャがアレンを扱きながら腰を使うと、今度はアレンが暴発した。勢いよく飛び出した白い密が尽きるまで、ナージャは長い指をアレンに絡めて扱き続けた。そのあまりの快感に、アレンがナージャの背に爪を立てる。 「痛てっ……」 「あ、ごめ……ん、あぁっ!」  ナージャの言葉を聞いて力を緩めたアレンだったが、再びナージャが動き始めて、爪はより深く背に食い込む。何度も達したナージャは、それすらも楽しむ余裕を見出していた。 「アレン……生まれ変わっても、番いになろう……」 「あぁあああんっ!!」  敏感になっている内部のしこりを突き上げられて、アレンは二度目の絶頂を迎えたが、それでもナージャはアレンに休息を与えない。結局、五回続けざまにイカされて、アレンはぐったりと意識を手放した。  人間と竜では精力が違う。そうも教わっていた。失神したアレンからまだ萎えぬ雄を引き抜いて、ナージャは白い愛液にまみれたアレンの身体中に唇で痕を残しながら、ひとり欲望がおさまるまで、己を慰めイキ続けた。     *    *    * 「……ジャ。ナージャ! 起きて!!」  強く揺さぶられて、目が覚めた。 「ん……アレン?」  戦装束のアレンが目に飛び込んできて、状況を理解する前に、遠くから二人を呼ぶ声も幾重にも重なって聞こえてきた。 「誰が呼んでるんだ……?」 「麓町の竜の民だよ。近くまで来てる。ナージャ、服を着て」 「ん? ……服?」  自らの身体を見下ろすと、情事の名残に体温はすっかり戻り、床に白い愛液の残滓が乾いているのが見て取れた。肩と太ももの銃創には、裂いた布が巻いてある。 「アレン……夢じゃ……ねぇのか!? お前、心臓を撃ち抜かれて……」 「カッツィが、護ってくれた……」  アレンは、首から提げていた魔除けを差し出した。その先についていた筈のアメジストは、粉々に砕けたものか、銀の装飾だけが僅かに残るのみだった。 「じゃあ俺たち、死んでねぇのか……?」 「そうだよ。人に見られたら説明出来ないから、早く服を着て、ナージャ」 「お、おう」  慌てて、ナージャを暖める為にアレンが脱がせて綺麗に畳まれていた衣服をナージャが着る間、アレンは外の桶に溜まった雨水を床にまいて清めていた。ナージャが服を着終える頃には、小屋の前に人々の声が迫っていた。 「どうしよう、ナージャ……。武器がない。もし民が戦に怒ってたら、素手で戦う事になる……」  だが身支度を整えたナージャは、思い切りアレンをその逞しい腕の中に抱き込んでいた。アレンが暴れる。 「ちょっ……ナージャ、聞いてる?」 「聞いてる。俺は、アレンを、民を信じてる……行こう、アレン」  昨夜の嵐が嘘のように、雲ひとつない晴れ渡った空のもとへ、二人は足を踏み出した。

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