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第2話 父の日、その前日のお迎えは
2. 父の日、その前日のお迎えは
今日は僕が保育園までお迎えに行く。草太は急なクレーム処理の仕事で帰りは夜遅くになるらしい。
園庭の前で待っていると、賑やかなお母さんに混じってお父さんのお迎えがチラホラとあることに気がつく。
スーツにデイバックや園バックを抱えて、手を繋ぐと途端にお喋りの声が大きくなる子どもに頷きながら、自転車の後部座席に乗せると颯爽と帰るお父さんたち。
なんか、かっこいいな。
玄関から先生に手を繋がれながら出てくる雄介が見えた。
門から中に入ると、僕を見つけて駆け寄ってくる雄介。
あ、という顔をする若い先生はまだ僕の顔をよく覚えてないみたいだな。
少し困った顔をして近くの先生に確認して、僕がお迎えの登録されている人物だと確認したらやっと僕に笑顔を向けてくれた。
「 こんにちは、お迎えありがとうございます 」
「 はせ、はせ!」
と言いながら
雄介が僕にまとわりつき腕にぶる下がる。
若い女の先生は僕に荷物を渡すと、
「 わかりました 」
「 え?」
「 雄介くん、今日、父の日のお父さんの絵を二つ描くんだって、その理由 。
いつも迎えにいらっしゃる方はメガネをかけてないけど、雄介くんの描いたお父さん、メガネかけていたから 」
「 あ、そうですか 」
「 はせのメガネ、カッコいい!」
「 カバン中にお父さんにあげる金メダルと一緒に入ってますからゆっくり見てあげてくださいね 」
嬉しくなった僕は雄介を抱き上げて頭のてっぺんにいつものキッスをする。雄介の髪は汗臭くてちょっとミルクと砂の匂いがして、
これは夕方の天使の匂い。
そんな僕らを見て少し頰を赤らめた先生。
「 カッコいいお父さんね!雄介くん 」
「 うん!僕にお父さん二人いるの 」
そんな可愛いことを言う雄介を僕はしっかりと抱きしめた。
さようならをしてお喋りしながら帰る道。
汗ばんだ小さな手を放したくない。
「 今日は夕ご飯何にするか 」
「 カレー!」
「 またぁ?」
「 いっつも◯ーレンジャーの日はカレーなんだよ 」
「 そっか、前の家でもそうだったね 」
気に入りのテレビ番組で曜日を把握する雄介が面白くて、頭の中で冷蔵庫の中のルーの残りを勘定する、足りたかな?
東京のこの街の生活は三人で、
ここが好きになりそうな、
海の街がだんだんと遠くなった僕がいる。
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