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第12話 限界

12. 限界 草太の話を遮って、これ以上今夜は知りたくないと言葉を投げる。 怒らないよう、泣かないように僕は精一杯の去勢を張った。 それから、何を話したかはよく覚えてないけど、心配だったのは雄介のこと。 「 お袋が毎日来るからそれは心配ない 」 その言葉は最後の僕の心を突き刺き、破壊し、散り散りにした。 さよなら草太、本当にさよなら。 週末の金曜日、休みを取ると僕は少ない荷物を持って家を出た。 土日にもう一回話そうって、何を話す? 僕にはもうそれを聞いていられる自信はないよ、雄介の前でみっともないことはしたくない。お願い分かって、僕だって家族になるとなれるかもって頑張ったしそう思ってたんだよ。 荷物を持った僕は一旦ウイークリーマンションを借りた。しばらく日本を出るまでそこで暫くは過ごせる、はず。 そして土曜日、草太からの連絡をやっとの思いで拒否している僕に原田さんから連絡があった。 『 天気もいい、遊びに来いよ 』 逃げるように僕は海に向かう電車に乗った。草太からの連絡には一切答えないまま。 それがとんでもない事件に発展するのを想像もしなかった。 僕の予感は一番大切な時に働かなかった。

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