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第10話 新たな一面。

恋人の秘部からゆっくりと指を引き抜いた後、立ち上がり、徐ろにシャワーヘッドに手を伸ばした。水無月は彼の口元が緩んでいる事に気が付き、眉を潜めた。 (もしや…文月は最初からそのつもりだったのか?もしそうなら、初っ端から彼の思惑通りに事を運ばせてしまったら、これからの関係性に響いてしまう…気がする。) 文月は半年の間彼と毎日の様に行動を共にし、水無月の性格を把握していたつもりだった。だが、恋人としての彼は、全ての主導権を自分に委ねる様な受け身な男では無いのだと、直ぐに気付かされる事となった。 水無月は熱のこもった表情で文月を見つめながら、彼の分身に手を伸ばした。彼の陰茎を手の平で包み、先走った先端を軽く指で引っ掻いた。 『ぅあっ…』 そのまま指の腹で嬲る様に擦りながら、緩急をつけて上下に扱きながら、彼の耳元で甘く囁いた。 「文月…大好き。文月は俺の事好き?」 文月は彼の手の動きと感触に酔い痴れながら、何度も頷いた。 「文月は、おれの嫌がる事はしないよね」 『あぁっ…もちろ…んっ』 「そっか、良かった。俺は自分で綺麗にしてから文月に抱かれたい。だから先にベッドへ行って良い子にして待ってて。」 そう言って水無月は文月の鎖骨をラインに沿って舐めた。彼の甘い囁きで興奮しきりだった文月だが、水無月の蕾を自分が洗うという夢を諦めざる終えない状況に置かれ、心中穏やかでは無かった。 『1人で出来るのか?』 「大丈夫だよ。初めてって訳じゃないし。」 細やかな抵抗を試みたつもりが、彼の思いも寄らない返答を耳にし、文月の心は乱され激しく動揺した。 『……初めてじゃないって?』 身体中の血液が逆流する様な感覚に襲われ、文月の表情が強張る。彼の問い掛けに困った表情を浮かべながら、水無月が答えた。 「文月には話した方が良いかなって思ってだけど…もし嫌われたらって…」 文月は、その先を聞くのが怖かった。友人としてだけの付き合いのままだったら、知らずに済んだかもしれないその話を…彼の新たな一面を…だが、聞かずにはいられなかった。 『…何を?まるで俺がお前について知らない事でも有るかの様な物言いだな。』 冗談めかして言ったつもりが、次第に語気が強まっていった。水無月は文月の強張った表情を見て、寂しげな笑顔を浮かべながら、決定的な言葉を彼に放った。 「俺、以前付き合っていた人も男だったんだよね…」

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