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第20話 友達でいるという事。

「文月が来た。」 『うん、そうみたいだな。俺が出迎えるから、お前は洗面所で顔を洗ってから来いよ。』 「え?何で?」 『涙、文月が見たら変に思うだろ?』 「あ…そうだね。」 周は水無月の頬にそっと触れ、涙を拭ってやると、彼を洗面所へと追いやった。 「ピンポーン」 チャイムが再び鳴る。周は急いで玄関に向かいドアを開けた。 てっきり水無月が出迎えてくれると思っていた文月は、周の顔を見て、落胆の表情を浮かべた。 『そんな残念そうな顔しなくても水無月は中に居るから入れよ。』 周は苦笑しながら、文月を部屋の中へと招き入れた。 『ああ。お邪魔します。』 (お前は、この部屋の主か?偉そうにしやがって。やっぱりコイツは気に食わない奴だ。) 文月は心の中で、周に向かって悪態をつきながら部屋へと入った。 「あ。文月、いらっしゃい。」 『ああ。げ、げ、元気だったか?』 「え?う、うん。今朝会ったばかりだし…」 『あ…そうだったな。』 (元気だったか?だと?俺は一体何を言ってるんだ。) 周は、水無月と文月が互いに見つめ合っているのを傍で眺めながら、複雑な表情を浮かべたが、直ぐに笑顔に戻り、2人に声を掛けた。 『ほらっ、2人共。そんな所に突っ立っていないで、飯にしようぜ。水無月、料理出すの手伝って。』 「うん、分かった。文月、直ぐに用意するからリビングで待ってて。」 『俺も手伝うよ。』 文月の声に反応し、キッチンから周が姿を現わす。 『俺とみーで充分だし、お客さんにそんな事させられないからな。文月は座って待っててくれよ。みー、来て。』 周は文月に反論の余地を与えず、水無月の手を引いて、キッチンへ戻って行った。 文月はソファーに腰を掛けた。 (俺がお客さん…昨日迄、水無月の隣に居るのは俺だった。彼の傍に居て、彼と笑顔を交わし合っていたのは俺だった。) (友達でいるという事は…水無月の傍に俺以外の誰かが居ても何も言え無いって事なんだ。友達でいるという事は…水無月が俺以外の誰かを好きになっても何も言えず我慢するしか無いって事なんだ。) (水無月が俺以外の誰かに笑顔を向ける。俺はそれを笑顔で見守る事が出来るのだろうか…友達でいるという事は…きっとそういう事なんだ…) 文月は2人の仲睦まじい姿を、ぼんやりと眺める事しか出来なかった…

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