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第22話 鈍い男。
『嫉妬?お前が俺に?なんで?』
『どうすっかなぁ…』
『周。お前さっきから何言ってんの?』
『お前…かなり鈍いな。』
周は呆れ顔をして俺を見つめて来たが、彼の言葉の意味を理解出来ず再び首を傾げる。
『あ〜〜っ。もう!ほらっ、急いで水無月を追いかけて仲直りして来いよ。』
周が手でシッシッと追い払う様な仕草を見せて言う。
(仲直り?え?やっぱり俺に怒ってるのか?)
『ああ。じゃあ、ちょっと行ってくる。』
状況が掴めないまま周にそう告げると、文月は慌てて水無月を追いかけて行った。
『みー…俺じゃ、駄目なのか…?』
玄関のドアがバタンっと勢い良く閉まるのを見つめながら、独りその場に取り残された周はため息混じりに呟いた。
マンションから出た文月は、コンビニに向かって走りだす。
(まだそう離れてはいない筈だ。居た!水無月だ!)
『水無月!!』
文月が彼の元へと駆け寄ると声に気が付き振り向いた。
「文月、どうかしたのか?」
『へっ?な、、なんで?』
「だって、息切らして凄い形相してる。」
『あ、ああ…えっと俺も一緒にコンビニ行こうかと思ってさ。』
「何買うんだ?」
『ワイン。』
「ワインなら3本も有るから充分だろ?」
水無月が素っ気なく答える。
『あ〜…ビール!ビール急に飲みたくなった!あと つまみ ! 空きっ腹にアルコールは良くないだろ?』
「メシ食ってたろ?」
(周が言った通りだ。さっきから、水無月の言い方に棘を感じる。)
『水無月。何か怒ってるのか?』
「別に。ビールとつまみ買うんだろ?」
水無月がふいっと顔を背けた。
「ほらっ、行こうぜ。」
再び歩き出そうとする彼の前に立ちはだかり、歩みを阻んだ。
『待てって、やっぱり何か怒ってるんだろ?』
「……」
『俺、何か悪い事したか?』
「お前…鈍過ぎ。」
(水無月にまで同じ事言われた…)
『分からないから聞いてるんだろ?』
「ワインとパスタ…」
『ん?』
「今度お前の部屋でワイン飲みながら食事するって…」
『うん。』
(あれ?それって、、又俺の部屋に来てくれるって事なんだよな?何で怒ってるんだ?)
『それで?』
「別に俺じゃなくても良いんだろ?」
『へ?何が?』
「あのパスタは俺の為に作ってくれたんじゃないのかよ?」
(え…えっと…ちょっと待てよ。俺の自惚れじゃないんなら、水無月は俺の手料理を2人きりで食べたいって思ってくれてた…のか?)
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