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第23話 線引き。

『水無月…』 (聞いても良いのか?答えてくれるだろうか…緊張して声が掠れてしまいそうだ。) 「何だよ。」 水無月の不機嫌な声が俺の鼓動を早める。自分の唾をゴクリと飲み込む音が聞こえる。 『俺の手料理食べたいのか?』 「……」 『俺の部屋に又来てくれるのか?』 「……」 『俺と2人きりで食事したい?』 (そんな顔するなよ…) 「だって…」 『だっての続きは?』 (困った様な泣きそうな顔。) 「れ、練習。」 (ほら、又 表情が変わった。今度は恥ずかしそうな顔。) 『練習?』 「俺に食べさせたくて練習したって言ってくれてたから…」 (何だよ、その顔。頬から熱が伝わって耳まで真っ赤にしやがって…見ているこっちも連られるちゃうだろ?) 「もういい!」 ふいっと視線を逸らし歩きだす彼の腕を掴んで、自分の元へと引き寄せた。 『良くない。俺が悪かった。』 (期待なんてしたくないのに。) 『来週末。お前の為にパスタ作るから来てくれるか?』 「良いけど…」 (声は怒ったままなのに嬉しそうな表情するなよ。) 『2人きりで食事をしよう。』 (そんな目で俺を見つめるなよ…期待しちゃうだろ?) 「2人きりで?」 (俺達、恋人にはなれないな。そう、言ったのは、お前だろ?今まで通り良い友達でいよう。そう言ったのも、お前だろ?) 『俺達良い友達でいるんだろ?だったら仲直りも兼ねて2人きりで食事をしよう。』 (でも…そう言わせたのは俺なんだ…)

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