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第24話 壁。
(良い友達として…か。文月の言う通りだな。)
『水無月?』
「うん。じゃあ、来週末にお邪魔させて貰うよ。」
水無月は、精一杯の笑顔を文月に向けた。
『そ、そうか。』
(文月、ホッとしてる。)
「周が待ってるから早く買い物済ませようぜ。」
『おうっ!』
(俺と友達でいるのが、文月にとっては嬉しい事なんだな。そっか…)
コンビニで買い物を済ませ家路を辿る。手を伸ばせば触れられる距離。揺れ動く想いを悟られない様、2人は笑顔で他愛の無い会話を交わした…
マンションに着くと周が玄関の前に座り込んでいた。
「周?こんな所に座って何してるんだ?」
彼の声に反応し、周が足元をフラつかせながら2人の元へと近づいて来た。
「周。酔ってるのか?」
周は水無月の前に立つと、彼を自分の胸に抱き竦めた。
『みー、さっきはごめんな。』
「怒ってないよ。俺もキツイ言い方してごめん。」
水無月が周の背中をポンポンっと叩く。
『みー。』
「ん?」
『お願いだから…俺から離れて行かないで…』
「周…」
『俺の事、嫌いにならないで…』
「嫌いになんて、なる訳無いだろ。」
『そっか…』
周は安心したのか水無月を離すとその場にしゃがみ込んだ。文月は水無月と周を見つめながら、2人の間には自分が入り込めない壁が有ると感じていた。だが、彼等にそれを問いただす権利も勇気も、今の自分には無いのだと良く分かっていた。
「文月。」
『うん?』
「周、酔い潰れたみたいだから、彼を俺の寝室まで一緒に連れて行ってくれる?」
『…お前の寝室?』
(水無月のベッドで自分以外の男が寝る…)
文月は胸が搔きむしられる様な痛みを覚えた。
「うん。俺1人じゃ無理だから。」
『…分かった。』
2人は周を寝室まで運んだ。ベッドの上に彼を寝かせると「水持って来るよ。」水無月がキッチンへと向かった。
「ん…みー…?」
周が目を瞑ったまま水無月の名前を呼ぶ。文月は周の傍に顔を寄せて話し掛けようとした。
『水無月は今、水を、、んんっ。』
突然、彼の手が伸びて来て頭を引き寄せられ、文月の唇を塞いだ。一瞬何が起こったか理解出来なかった。数秒の後、周にキスをされた事に気が付き、慌てて彼から離れた。
『周、お前っ!」
『みー…好き…だ…よ。』
『…え…?』
周は独り言の様に呟くと、スースーと寝息を立て、そのまま深い眠りについた。
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