25 / 112

第25話 触れさせないで…

(みーってのは…水無月の事だよな?好きだよってのは、水無月を好きって事だよな?唇も…俺を水無月と勘違いして触れたんだよな?2人は只の友人じゃないのか?) 周を見下ろしながら思考がぐるぐる巡って止まらない。 「文月?」 寝室の入り口から水無月の声がする。彼の声で石の様に固まっていた身体がビクッと震えた。そろそろと振り向いて彼を見つめるが、水無月は文月の心の内に気付かず、周の元へと近づいて行った。 「水、持って来たけど….寝ちゃったみたいだな。」 俺に話し掛けてるのか独り言なのか水無月が小声で囁く。穏やかな目で、笑みを浮かべながら周を見つめる彼から視線を外せない。こんな状況においても尚、彼を愛しいと思ってしまう… 一方で、やるせなさが胸を蔓延る。 「文月。周、寝ちゃったから、2人で飲み直そっか。」 立ち上がり寝室から出ようと歩き始める水無月を追いかけ、背後からドアノブに触れる彼の手に自分の手を重ね、ドアと自分の狭間に彼を閉じ込めた。 水無月は予期せぬ彼の行動に息を飲んだ。沈黙が2人を包み、文月の真意が掴めず、彼に掛ける言葉が見つからない。 (ベッドには周が寝ているのに…何か言わなきゃ。でも…) 「文月…んぁっっ。」 水無月の頸に小さな痛みが走る。文月の唇で吸われ、歯を立てられた。息つく暇なく彼の舌が耳を這い、首筋から耳そして全身に痺れが伝う。重ねられた手に力が篭る。 『水無月…』 切なげな文月の声に頭の中が侵食されていく様で、振り返るのが怖い。彼の顔を見るのが怖い。 「…何?」 『来週末…来てくれるよな?』 「…うん。」 『俺、直ぐには無理かもしれないけど、お前の友達でいられる様になるから。だから其れ迄は…』 「其れ迄は…?」 『……』 文月は無言のまま俺の身体を反転させた。彼が俺の腕を抑えつける。身動きが取れない。文月の熱が伝わって来て、視線を外す事も出来ない。 (こんなん…駄目だろ…) 「んっっふっ。。」 唇が触れた。貪る様なキスをされた。「くちゅくちゅっ」って音が鳴る。文月の舌と自分の舌が交わる音。 駄目だと分かっていても淫らで甘い彼の舌に応えてしまう。。彼の唇が離れ、俺の耳元に顔を寄せると、甘く切ない声で囁かれた。 『だから其れ迄は…俺以外の人に触れさせないで。心も身体も全部…』

ともだちにシェアしよう!