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第26話 エゴイスト。

(ゲイか?男が好きなのか?俺は何人目の男なんだ?文月にそう言われた。俺が一番聞きたくなかった言葉を好きな男に言われた。なのに…酷い言葉を放ったその口で、俺に蕩けるようなキスを落とす。友達でいられる様になるからって言っておきながら、他の人に触れさせるなだってさ…) 「文月…分かってる?」 耳元で文月の熱を感じながら水無月は静かに問い掛ける。 『何を?』 「言ってる事とやってる事が矛盾だらけだって、分かってるのか?」 『うん…分かってる。』 (分かってるよ。充分過ぎる程良く分かってる。俺が水無月を傷付けた事も。水無月が俺の事を好きになってくれる日がもう訪れないって事も。だから俺にこんな事言う資格なんて無いって事も…それでも触れたいって思ってしまう。誰にも触れさせたく無いって思ってしまう。分かってるよ。俺のエゴだって事も…) 文月は水無月の首元から顔を離し、彼の瞳を見つめながら、己のエゴを口にした。 『それでも、俺の馬鹿げた願いを受け入れて欲しい。』 「……」 『駄目…か?』 (其れが俺にとってどれだけ辛い事か本当に分かってるのか?) 水無月は喉まで出かかった言葉を飲み込む。文月の利己的な物言いに腹が立った。それでも彼に触れられたいと思ってしまう。自分以外の誰にも触れて欲しくないと思ってしまう。そんな自身にも無性に腹が立った。腹が立ち過ぎて文月を苛めたくなった。 「ごめん。無理だ。」だから、そう答えた。 『…そっか。だよな。』 (あっさり引き下がるぐらいなら最初からそんな事言うな。) 『ごめん。今、俺が言った事は忘れて。』 (ごめんって言いながら、忘れてって言いながら、哀しそうな目で俺を見つめてくるな。無理に拵えた笑顔を俺に向けるな。大好きなお前の笑くぼを俺に見せるなよ。) 心の中で彼に向かって文句を垂れながら、気付いたら文月の唇を俺の親指の腹がなぞってた。 『水無月…?』 文月の震えた声を塞ぐように、今度は指の代わりに自分の唇を彼の唇に当てがった…

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