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第29話 交錯する想い。

『身体だけの関係なんて虚しいだけだ。』 俺が言った。みーに言った。本当は手放したくなんかなかった。俺だけの人で居て欲しかった。後悔してもあの頃に戻れはしない… 文月が水無月に向ける眼差しを見て、自分と同じ想いをに抱いていると感じていた。さっきの2人の会話を耳にし、みーの涙を目にして、それが確信に変わった。 2人の間には友達以上の感情がある。セフレ…セフレなら良いよ。みーは文月にそう言った。 (互いに好きな筈なのに、文月も、何故あんな提案を受け入れたのだろう…2人の間に一体何が有ったんだ?文月はみーの事を何処まで知っているんだ?みーは、凪や俺との過去を、文月に話したのだろうか…次から次へと疑問が湧いて来る。) (だが、水無月に面と向かって尋ねる勇気が持てない。水無月の口から文月への想いを聞いてしまったら、感情を抑えられないかもしれない。彼を手離す事が出来るのだろうか…自分でも分からない。だから聞くのが怖い。) 水無月に幸せになって欲しいと願う想いと彼への想いを断ち切れない自分が交錯する。 水無月が寝返りを打ち、彼の頸に文月が付けた印が在る事に気付いた。自分以外の男が触れた跡。胸の奥がチリチリと焼け付く様な感覚に襲われる。周は文月の想いを上書きするかの様に、水無月の頸に自身の唇を静かに当てがった。彼の寝顔を見つめ、涙が頬を伝う。 『本当に馬鹿だな。みーも、俺も…』 水無月を閉じ込める様に抱き締めながら、周もいつしか眠りに就いた。

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