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第34話 実直な人柄。

身長は172㎝ 水無月とほぼ変わらない背丈。亜麻色の髪と同じ色をした二重で切れ長い瞳。今迄にも、綺麗・美しいと言われる事は幾度も経験した惠だったが、本人は自覚が無く、自分が何故そんな言葉で褒められるのか不思議でならなかった。時には、それを不快に感じた時すら有った。 (それなのに…) 惠は、周に言われた言葉を素直に喜んでいる自分に困惑した。 「初対面の方に面と向かって綺麗と言われたのは初めてです。」 『ああっ、すみません。』 「水無月さんを褒めたついでの様な感じが否めませんが、嬉しいです。」 周は、惠の言葉に、又もや慌てふためく。 『あ、いや、思った事をつい口にしちゃっただけで。水無月が綺麗なのは事実ですが、惠さんの事を綺麗だと言ったのも本心ですよ。』 「ふふっ。松永さんって正直な方なんですね。」 惠は周の実直な人柄に目を細める。 「周、俺の事綺麗とか言うの恥ずかしいから止めて。」 『なんで?本当の事だろ?』 「お2人はとても仲が良いんですね。」 『はい!俺とみーは仲が良いんです!』 「だから〜、そういう事を人前で言うの止めろってば。」 『んじゃ、2人きりの時に言う?』 水無月は恥ずかしい台詞を臆面も無く口にする周に半ば呆れ、肩を竦めた。 2人の仲睦まじいやり取りを見つめながら、微笑ましいと思う一方で、心が騒めいた。惠は、自身の不可解な感情を遮る様に、2人をリビングへと招き入れた。 「皆さんお待ちですから、どうぞ。」 1人暮らしには不向きな、20畳は有りそうな広いリビング。既に到着していた店のスタッフ達が料理と飲み物をテーブルの上に手際良く並べていた。キッチンから出てきた1人の男性が水無月に気が付き、走り寄って来る。 『みー君だぁ〜!』 (みー君だと?なんだコイツ?) 「勝、来てたのか。」 『うん!みー君が来るって惠さんから聞いたから、大学の講義の後に椿と速攻で来た。』 (みーがさっき言ってた大学の後輩か?背は俺より少し低いな、180㎝ってところか。顔は…イケメンの部類に入るな。俺の方が格好良いけど。それにしても馴れ馴れしい奴だ。) 自分の事は思いっきり棚に上げて、勝に向けて心の中で毒付く。 『椿〜!みー君来たぞ!』 勝がキッチンに向かって声を掛けると、女性と思しき人物が顔を出した。 《勝と椿は『男でいたくない俺と男が好きな彼』の登場人物です。》

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